研究課題/領域番号 |
18H02667
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
小池 智 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 分野長 (30195630)
|
研究分担者 |
市村 宏 金沢大学, 医学系, 教授 (10264756)
小林 郷介 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (80644989)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | エンテロウイルス71 / 病原性 / 神経病原性 |
研究実績の概要 |
基本的な戦略として、多数のEV71分離株の塩基配列の決定とtgマウスによる病原性の決定を行い、点塩基置換や相同的組換えによって生じるウイルスの毒力変化に関与する遺伝情報を同定する。 昨年度までに日本国内の手足口病患者から分離された約50株についてSCARB2tgマウスのよる病原性解析と次世代シークエンサーによる塩基配列の決定を行った。手足口病患者から分離された株であっても、病原性は非常に高いものから低いものまで多岐に渡り、しかも極めて近縁のウイルス株であっても病原性の程度が大きくかけ離れている例がいくつか認められた。この中からsubgenogroup C4に属している強毒株(N772)と弱毒株(100)を代表株とすることとした。両者の間で17アミノ酸の違いが存在する。2つの株の感染性cDNAを作製し、これを用いて組換えウイルスを作製した。現在までにウイルスゲノムの前半(5’-UTR, P1)と後半(P2, P3, 3’-UTR)で組換えを行い、マウス毒力試験を行った。その結果前半部分が強毒株由来の株が強毒性を示した。このことから強毒性に必要な遺伝情報はウイルスゲノムの前半にマップされることが明らかになった。国内のsubgenogroup B5に属するウイルスについては多くが弱毒であるため明確なペアが存在しなかったが、ベトナム由来の株については強毒株(128-TS)と弱毒株(399-TS) が得られたので、同様な解析を行なった。この場合でもウイルスゲノムの前半部分に強毒性がマップされた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床分離株からsubgenogroup C4, B5ともに強毒株と弱毒株のペアを選択することができた。これらの株のcDNAの作製、さらにその間のキメラの作製も順調に行うことができている。病原性を決定する遺伝情報が多数存在し、ゲノム全体の存在している場合には強毒性に必要なゲノムが明確にならない心配があったが、ゲノム全体に散らばっているようではない。また、C4, B5ともにウイルスゲノム前半部分にマップされている。さらに解析を進めることにより、重要な配列の同定は可能であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までにウイルスゲノム前半部分に同定されている強毒性を担う塩基、あるいはアミノ酸をより詳細に同定する計画である。まずは前半部分をさらに5’-UTR, P1部分の二つに分割し、どちらに強毒性を支配する遺伝情報が存在するかを確認する。さらに単一の塩基、もしくはアミノ酸のレベルまで同定する。もし5’-UTRであった場合にはウイルスゲノムの複製あるいはウイルスタンパクの翻訳開始などのステップに違いがあることが想定される。もしP1領域であった場合にはウイルスの安定性、受容体SCARB2あるいは別のattachment receptor と呼ばれる受容体との結合などに違いがあることが予想される。このような場合を想定して、毒力変化のメカニズムを解明する。
|