研究課題
2015-16年にベトナム・ハノイ小児病院で手足口病患者からサンプリングした咽頭および直腸拭い液から分離されたEV71のsubgenogroup B5 (24株)およびC4 (8株)の神経病原性をSCARB2-tgマウスを用いて評価した。その結果、C4の方が強い病原性を示した。患者の臨床症状の重篤度もC4の方が強い結果が示唆されていたため、この時期に流行していた株についてはsubgenogroupによって病原性が異なっている可能性を示す結果であった。以上の結果をScientic reports誌に報告した。上記解析や日本国内で分離された株の病原性解析から、近縁な株の中でも病原性の強弱があることが明らかになった。同じ接種条件にも関わらず強毒株を接種したマウスは全頭死亡するが、弱毒株を接種したマウスは一頭も死なないケースがあった。この結果はEV71の強毒・弱毒株間でゲノム配列が異なっている部位の中に、EV71の神経病原性の強弱を決定する塩基が存在することを示唆していた。このような塩基を特定するために、日本およびベトナムで分離されたEV71臨床分離株の中から強毒株と弱毒株を選び、両株の遺伝子配列を入れ換えたキメラウイルスを作製し、神経病原性を評価した。昨年度までにすでに毒力はゲノムの前半部分で規定されていることを明らかにしていたが、今年度はさらに5’非コード領域のステムループIVの中の特定の塩基が病原性を規定している可能性が示唆された。今後はその塩基の個体レベル、細胞レベルでの機能解析を行って、EV71の神経病原性に関与する要素を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
日本国内及びベトナムで分離されたEV71についてSCARB2tgマウスを用いて病原性の評価が順調に出来ている。強毒株、弱毒株が予想通り分離され、しかも両者のキメラについてもマップすることが出来ている。現在5’非翻訳領域の狭い領域までマッピングが出来ているので順調である。
5’非翻訳領域はウイルスRNA複製やウイルスタンパクの翻訳開始に重要な領域なので、in vitroでのこれらの活性のアッセイと個体内での病原性のアッセイを組み合わせて解析し、このウイルスの毒力がどのように決定されているか明らかにする。また、強毒株と弱毒株の代表として別のペアを解析することにより、これ以外のメカニズムによる毒力決定機構が明らかになる可能性があるので、それも試みる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
Scientific reports
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