研究課題
EV71株について毒力を決めている領域の同定をさらに進めた。昨年度までにsubgenogroup C4に属する強毒と弱毒の代表株の間のキメラウイルスを作製し、SCARB2tgマウスの死亡率によって神経毒力を測定した。その結果、毒力の違いは5’-UTRにマップされた。この領域をさらに3つに分割して同様の実験を行い、stem-loop III, IVを含む領域に絞り込んだ。この範囲では7塩基の違いが存在するのみである。強毒株の配列を元にしてそれぞれの違いのある箇所を弱毒型に変異(1塩基置換)すると228番目A→G、322番目C→Uの置換によって毒力が大きく低下し、この両方の塩基を同時に置換するとさらに弱毒化した。逆に弱毒株を元にしてこの2塩基の強毒型への置換を行うと強毒化した。強毒株と弱毒株はRD-A細胞の増殖効率に関してはほとんど違いがないが、動物個体の中枢組織場合にはその増殖効率に大きな違いがあった。この領域はタンパク合成開始に関係するInternal ribosome entry site内にあることから、少なくとも個体内の神経細胞ではこの塩基置換によってウイルスの複製効率(おそらくタンパク合成効率)が変化していると考えられる。他のEV71株の2塩基を比較し、毒力はこの部位の違いだけで全て説明できるかどうか調べた。いくつかの株においてはこの2塩基は中間型の配列(228G, 322U)であったが、それにも関わらず強毒性と弱毒性を示す株が存在していた。このことから、今回比較した2株以外の比較を行うとさらに毒力に関係する部位が見つかる可能性が示唆された。総合的に考えるとウイルスの毒力はstem loop IV付近の構造、特に228, 322番目の塩基を含む複数の置換によって毒性が制御されていると考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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臨床とウイルス
巻: 48 ページ: 330-335
https://www.igakuken.or.jp/neurovirology/index.html
https://www.igakuken.or.jp/project/to-tomin/to-pro04.html