研究課題
慢性感染やがん組織などでは、T細胞が抑制受容体PD-1を高発現し、機能的不全(疲弊)状態に陥っている。この不全状態はPD-1などによる抑制と考えられるが、実際には他の抑制レセプターTIGITおよびLAG3などを介してもT細胞の活性化・機能の抑制が誘導されている。本研究では、これら新規抑制性受容体を介するT細胞活性化と機能の抑制メカニズムを解析することを目的とした。免疫シナプスでのLAG3およびTIGIT抑制レセプターの詳細な動態解析のため、MHC-II/抗原ペプチド、およびICAM-1をGPI型で発現させたplanar膜の上で 抗原特異的T細胞を活性化させて、LAG3-GFP, TIGIT-GFPおよびPD-1-GFPの動態をTIRF顕微鏡にて解析した。 LAG3およびTIGITは活性化に伴ってミクロクラスターを形成し、活性化の中心であるTCRミクロクラスターと共局在した。相互の動態と局在の関係を調べるために、異なる蛍光でラベルした分子を発現させ、LAG3-Halo/PD-1-GFP, TIGIT-Halo/PD-1-GFP等の組合せで同時蛍光解析を行い、相互関係を解析した。活性化に伴うLAG3クラスター, TIGITクラスター、TCRミクロクラスターは完全に共局存した。また、常に活性化の中心であるTCRミクロクラスターとの動態の関係を明らかにする。抗原濃度を変化させて弱い刺激で活性化させると、TCRミクロクラスターとこれら抑制レセプターのクラスターの乖離が観察され、抑制機能との関連を解析する必要がある。LAG3との共刺激によるTCR活性化シグナル分子のリン酸化状態に大きな差は見られていない。LAG3に会合する分子群をプルダウン、Mass解析を行い、多くの会合分子を得たので、抑制機能の標的候補分子として、以降解析して行く予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度の主な解析目的としての、LAG3とTIGITの分子動態を明らかにでき、更に活性化中心としてのTCRミクロクイラスターとの関連もはっきりした。次の大きな目標である抑制メカニズムに向かっては、LAG3会合分子の解析を進めており、多くの候補を得ており、これらの解析が可能な状況になっており、全体としておおむね順調にすすんでいると思われる。
LAG3, TIGIT共にTCRミクロクラスターに局在することがわかったので、共局在することがT細胞抑制活性に関与するか、構造ー機能の関連を解析して明らかにする。一方、抑制機能に直接関与すると思われる会合分子の候補を数多く得たので、その解析から抑制メカニズムの解明を進めたい。これらを進めるために、LAG3, TIGITに対する抗体を加えて、機能抑制の解除が行われる際の分子動態の変化を解明する。これによって、臨床的にもこれら抑制レセプターによる療法が有効である場合の、メカニズムのエビデンスになると考えられる。
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