研究実績の概要 |
本研究は、タンパク質ライブラリーを新規手法により作製し、炎症性疾患の病変部位で制御性T細胞(Treg)の機能抑制を引き起こす因子を同定することや、機能抑制を受けているTregの賦活化を誘導する因子を探索することを目的としている。この新規ライブラリ(IFDRライブラリと呼称する)は、分泌シグナルの下流にcDNAを挿入し、その下流でGFPとIgGのFc部位に連結させるものであり、機能を持つタンパク分子の割合を飛躍的に高めたものである。 前年度までの研究で、①分泌シグナルペプチドの改良 ②細胞株の改良 ③薬剤耐性遺伝子の変更 の3点で改良を重ね、IFDRライブラリを用いたスクリーニングのスケールアップに成功した。さらに、このライブラリを用い、TregのT細胞増殖抑制能を制御する分子のスクリーニングに着手し、約10000分子に対し1次スクリーニングを行った結果、細胞増殖をフローサイトメトリーで直接確認する3次スクリーニングをクリアした分子として、7分子を見出した。それら7種類の分子に関しては、293T細胞を用いたシステムにより組み換えタンパク質を精製し、4次スクリーニングに供した。その結果、7分子のうち2分子が、TregによるT細胞増殖抑制を阻害する機能を示した。 令和2年度の研究では、これら2分子(9-7F-6, 18-11F-7)がTregの機能に影響を及ぼす分子メカニズムの検討を進めると共に、引き続きIFDRライブラリを用いたスクリーニングを継続した。9-7F-6, 18-11F-7に関し、Treg、エフェクターT細胞(Teff)、抗原提示細胞のいずれの細胞と相互作用するのか検討したところ、前者はTreg、後者は抗原提示細胞と相互作用することを確認した。一方、本年度新たに行ったスクリーニングでは、TregのT細胞増殖抑制能を制御する分子として新たに4分子を見出した。
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