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2019 年度 実績報告書

組織内共生細菌を介した樹状細胞の免疫メタボリズム制御と生体応答

研究課題

研究課題/領域番号 18H02674
研究機関国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所

研究代表者

國澤 純  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, センター長 (80376615)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード共生細菌 / 腸管免疫 / 樹状細胞 / マクロファージ
研究実績の概要

腸内細菌を介した免疫制御は、様々な疾患に関わることが分かり、健康科学における新潮流となっている。これまでの研究の多くは、腸管管腔や上皮細胞の粘液層に存在する細菌に焦点が当てられ解析が進められてきたが、我々は、これらの部位だけではなくパイエル板などの腸管リンパ組織の内部にも細菌が共生していることを明らかにし「組織内共生」という新概念を提唱してきた。本年度はこれまでの研究を拡張して大腸粘膜組織にも着目し、大腸粘膜固有層に存在するマクロファージに共生する細菌としてStenotrophomonas Maltophiliaを同定し、その共生メカニズムの解明を行った。
骨髄由来もしくはマウスより単離したマクロファージとStenotrophomonas maltophiliaの共培養により、ミトコンドリア呼吸とIL-10産生が増加することを見いだした。さらにsmlt2713遺伝子にコードされる分子量25 kDaのタンパク質を欠損したStenotrophomonas maltophiliaではIL-10の産生誘導能が欠失すること、逆にIL-10欠損マクロファージではStenotrophomonas maltophiliaによる細胞内共生が破綻することから、smlt2713とIL-10はそれぞれ菌、宿主細胞において共生を成立させる必須因子であることが判明した。大腸のマクロファージはIL-10を産生することで恒常性の維持に貢献していることから、本研究結果は、大腸における細胞内共生ネットワークを介した恒常性維持機構の一つを提唱したものとなる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実施計画の通り、Stenotrophomonas maltophiliaとマクロファージの共培養系におけるマクロファージの機能変化の解析から、抗炎症性サイトカインであるIL-10の産生を介した恒常性維持のユニーク性を明らかにした。さらに、このユニーク性がStenotrophomonas maltophiliaのSmlt2713遺伝子にコードされた分子量25 kDaのタンパク質であることを明らかにした。またStenotrophomonas maltophiliaによりマクロファージから産生誘導されたIL-10はStenotrophomonas maltophiliaのマクロファージとの細胞内共生であることが判明した。このように、本年度の成果は、Stenotrophomonas maltophiliaは、Smlt2713にコードされたタンパク質を持つことによって、大腸マクロファージからのIL-10産生を誘導することで、細胞機能を抗炎症性に変化させ、それにより腸の恒常性を保っていることを示すことができた。このように、研究は予定通り進捗していると考える。

今後の研究の推進方策

令和1年度の検討から、共生細菌であるStenotrophomonas maltophiliaとマクロファージによる細胞内共生をつかさどる因子としてsmlt2713遺伝子にコードされる分子量25 kDaのタンパク質を同定している。一方、これまで解析を行ってきた腸管リンパ組織であるパイエル板の内部で樹状細胞に共生するAlcaligenesについては、主要菌体成分であるLPSに着目し、同じグラム陰性菌である大腸菌由来のLPSと比べ、炎症誘導活性が異なることを見いだしている。そこで、次年度以降はLPSの活性中心であるリピドAに着目した研究を進める。具体的には、AlcaligenesのリピドAの構造解析と化学合成を行うと共に、合成したリピドAを用いて、樹状細胞の活性化など宿主免疫系への作用を検討し、リピドAの構造との構造活性相関を明らかにする。さらにリピドAなどの菌体成分はワクチン効果を増強するアジュバントとしても応用可能であることが知られていることから、ワクチンアジュバントとしての有用性についても検討を行う。これらの解析によって、Alcaligenesの共生メカニズムについて分子生物学的な観点から明らかにすると共に、ワクチンアジュバントとしての応用性を提示したいと考えている。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 12件)

  • [雑誌論文] Impaired mucociliary motility enhances antigen-specific nasal IgA immune responses to cholera toxin-based nasal vaccine.2020

    • 著者名/発表者名
      Lan H., Suzuki H., Nagatake T., Hosomia K., Ikegami K., Setou M., and *Kunisawa J.
    • 雑誌名

      Int Immunol

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1093/intimm/dxaa029

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Diversity of energy metabolism in immune responses regulated by microorganisms and dietary nutrition.2020

    • 著者名/発表者名
      Hosomi K, *Kunisawa J,
    • 雑誌名

      Int Immunol

      巻: -- ページ: -

    • DOI

      10.1093/intimm/dxaa020

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Persistent colonization of non-lymphoid tissue-resident macrophages by Stenotrophomonas maltophilia.2020

    • 著者名/発表者名
      Takahashi I., Hosomi K., Nagatake T., Tobou H., Yamamoto D., Hayashi I., Kurashima Y., Sato S., Shibata N., Goto Y., Maruyama F., Nakagawa I., Kuwae A., Abe A., *Kunisawa J., and Kiyono H.
    • 雑誌名

      Int Immunol

      巻: 32(2) ページ: 133-141

    • DOI

      10.1093/intimm/dxz071

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 17(S),18(R)-epoxyeicosatetraenoic acid generated by cytochrome P450 BM-3 from Bacillus megaterium inhibits the development of contact hypersensitivity via G-protein-coupled receptor 40-mediated neutrophil suppression.2019

    • 著者名/発表者名
      Saika A., Nagatake T., Kishino S., Park S.B., Honda T., Matsumoto N., Shimojou M., Morimoto S., Tiwari P., Node E., Hirata S.I., Hosomi K., Kabashima K., Ogawa J., *Kunisawa J.
    • 雑誌名

      FASEB BioAdv

      巻: 2 (1) ページ: 59-71

    • DOI

      10.1096/fba.2019-00061

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Clostridium perfringens enterotoxin-based protein engineering for the vaccine design and delivery system.2019

    • 著者名/発表者名
      Lan H, Hosomi K, *Kunisawa J,
    • 雑誌名

      Vaccine

      巻: 37(42) ページ: 6232-6239

    • DOI

      10.1016/j.vaccine.2019.08.032

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] BLT1 mediates commensal bacteria-dependent innate immune signals to enhance antigen-specific intestinal IgA responses.2019

    • 著者名/発表者名
      Nagatake T., Hirata S.I., Koga T., Kuroda E., Kobari S., Suzuki H., Hosomi K., Matsumoto N., Yanrismet Y., Shimojou M., Morimoto S., Sasaki F., Ishii K.J., Yokomizo T., and *Kunisawa J.
    • 雑誌名

      Mucosal Immunol

      巻: 12(5) ページ: 1082-1091

    • DOI

      10.1038/s41385-019-0175-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 細胞内共生細菌を介した免疫制御と炎症2020

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 腸から眺める健康科学の将来展望2020

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      彩都産学官フォーラム2020
    • 招待講演
  • [学会発表] Diets and Commensal Bacteria Create Gut Environment for the Immunological Health and Diseases2019

    • 著者名/発表者名
      Jun Kunisawa
    • 学会等名
      ICoFF 2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 腸内環境から考える新しいワクチン学2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      第23回日本ワクチン学会
    • 招待講演
  • [学会発表] ビッグデータ解析から見えてきた「食・細菌・免疫」のユニークな相互作用と創薬・機能性食品開発への展開2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      日本食品免疫学会設立15周年記念学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 腸内環境を起点とした創薬研究の課題と展望2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      第92回 日本生化学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 腸内環境から考える疾患予防・バイオマーカー探索の可能性とPrecision Medicine/Healthへの新展開2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      フォーラム2019 衛生薬学・環境トキシコロジー
    • 招待講演
  • [学会発表] マイクロバイオーム解析から見えてくる健康科学の近未来2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      フォーサム2019 第56回 日本眼感染症学会
    • 招待講演
  • [学会発表] アレルギーにおける食と腸内細菌の相互作用の理解と近未来型健康科学への挑戦2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      第23回 腸内細菌学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 腸内細菌を介した免疫制御と生体防御2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      第60回 日本臨床ウイルス学会(教育講演)
    • 招待講演
  • [学会発表] 栄養と腸内フローラから考える腸内環境からの健康科学2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      第73回 日本栄養・食糧学会(特別講演)
    • 招待講演
  • [学会発表] 微生物由来脂質産物を用いたワクチン、創薬、機能性食品への展望2019

    • 著者名/発表者名
      國澤 純
    • 学会等名
      第92回 日本細菌学会 札幌
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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