研究実績の概要 |
構築した約100種類の融合遺伝子コンストラクトを用いて, 3T3マウス線維芽細胞, C2C12マウス筋芽細胞, マウス間葉系幹細胞のisogenic細胞株を樹立し, 細胞株からのRNA-seqを行った. 各融合遺伝子が発現制御する特異的な遺伝子発現パターンを比較し, クラスタリング解析を行った. さらに, Gene Set Enrichment Analysis (GSEA)により各融合遺伝子の特徴となる発現遺伝子群やシグナルパスウェイを同定し, クラスターごとに分子標的を絞り込み, 約20種類の候補分子標的薬の選定を行った. 候補薬剤を用いた薬剤投与実験を開始し, mixed all nominated mutants in one method (MANO法)で評価することで, 融合遺伝子特異的に作用する分子標的薬の候補を複数同定した. また融合遺伝子が導入されたトランスフォーム細胞のみが生存可能なバイオマテリアル探索を実施し, 候補となるバイオマテリアルの選定を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約100種類の機能評価予定の肉腫関連融合遺伝子のクローニングを行い, コンストラクトを構築した. マウス線維芽細胞である3T3細胞に融合遺伝子を導入し, 3T3 focus formation assay及びMANO法でのcell growth competition assayを行い, がん化能を評価した. 3T3細胞においてがん化能が評価できなかった融合遺伝子についてはC2C12マウス筋芽細胞及びマウス間葉系幹細胞に遺伝子導入し, 分化誘導培地やバイオマテリアルを選択し分化誘導を行い, MANO法での細胞数変化を定量し, 融合遺伝子の分化抑制機能を評価すると共に評価に適した培養系を確立した. 更にトランスフォームしたがん細胞のみが生存可能なバイオマテリアル探索を行った. がん化を確認できた融合遺伝子を3T3細胞, C2C12細胞に導入したisogenicモデルで, 異なる蛍光蛋白質でラベルした親株とがん化株をポリマースライド上に播種し, 比較セルアレイを実施した. がん化株のみが有意に増殖・接着する合成ポリマーを蛍光イメージングにより抽出した. 構築した約100種類の融合遺伝子を発現する, 3T3マウス線維芽細胞, C2C12マウス筋芽細胞, マウス間葉系幹細胞のisogenic細胞株のRNA-seqを行い, 各融合遺伝子が発現制御する特異的な遺伝子発現パターンを比較し, クラスタリング解析を行った.がん化を確認できた融合遺伝子を3T3細胞に導入したisogenicモデルで, MANO法を用いて薬剤感受性実験を行い, 特定の融合遺伝子に特異的効果を示す候補薬剤を同定した. 以上のように、順調に融合遺伝子の機能解析及び特異的標的薬のスクリーニングが進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き, 構築した約100種類の融合遺伝子を3T3マウス線維芽細胞等に導入したisogenic細胞株を用い, MANO法により融合遺伝子特異的に作用する分子標的薬の候補を同定する. 同定された候補薬については, 分子標的薬の特異的薬効を動物実験により検証する. また, 2019年度に同定された, 融合遺伝子が導入されたトランスフォームした細胞のみが生存可能なバイオマテリアルのproof-of-conceptを取得し, 治療法の確立を目指す.
|