研究課題
肝癌は、世界の癌死の第3位に挙げられる予後不良の癌である。肝癌の発症機序解明や治療ターゲットの発見のために、多くのゲノム研究、転写産物の研究が行われてきた。しかしながら、それらの多くの研究は、読み取り長が短い(短鎖)の第2世代シークエンサーを用いて行われてきた。短鎖シークエンス技術には、短鎖であるが故の原理的限界があり、変異や転写産物の全貌を明らかにすることができない。本研究では、長鎖シークエンス技術を用いて、肝癌の転写異常や変異の全貌を包括的に明らかにし、肝癌発症のメカニズムの解明、治療標的の探索を行う。シークエンスには、Oxford nanoporeシークエンサーを用いることにした。ライブラリ構築手法の検討を行い、最適なライブラリ構築法を決定した。条件検討のため、細胞株から抽出したRNAからcDNAを作成し、シークエンスを行った。短鎖法と比較した結果、発現量はよく一致していた。また、融合遺伝子や新規スプライシングバリアント、エクソン長の変化を検出する手法を開発し、実験的検証を行った。以上の研究により、実験手法およびデータ解析手法をほぼ確立できたと考えている。臨床サンプルの解析に着手しており、融合遺伝子や新規スプライシングバリアント、エクソン長の変化が検出されている。実験的検証を行った結果、精度よく転写異常が検出されていることが示唆されていた。2019年度は、症例数を増やし、発がんやがんの進展に意義のある転写因子の検出を目指す。
2: おおむね順調に進展している
実験手法の最適化およびデータ解析手法の確立がほぼ終了している。今後症例数を増やす準備が整ったと考えられ、予定通りの進展が見られたと考えている。
今後は、症例数を増やして解析を行う。症例数を増やした結果、現在の解析の問題が発見されることも予想され、試行錯誤が必要になると考えられる。また、機能的意義がある発見が見られた場合、分子生物学的解析にも着手する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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