研究課題/領域番号 |
18H02684
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
八尾 良司 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 部長 (80291095)
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研究分担者 |
足立 淳 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (20437255)
長山 聡 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70362499)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 家族性大腸腺腫症 / 遺伝学的背景 / KRAS |
研究実績の概要 |
本研究課題では、同一の家族性大腸腺腫症(FAP)患者の腫瘍は、同一の遺伝学的背景をもち、かつ様々な体細胞変異を有するという特徴に着目し、5名のFAP患者から樹立された計42個のオルガノイドを用いて、遺伝学的背景と体細胞変異による腫瘍発生機構と細胞内シグナル経路の制御を明らかにする。 平成30年度は、42個すべてのオルガノイドを免疫不全マウスに異所移植を行なった。その結果、41個のオルガノイドには造腫瘍性は認められなかったものの、1つで腫瘍を形成した。このオルガノイドは、同一患者由来のオルガノイドの中で唯一KRAS変異を有していた。また、遺伝子発現データーのパスウエィ解析による遺伝的背景因子の探索を行なったところ、IFN/STATシグナル経路がこの患者で更新していることが明らかになった。これらの結果から、FAPモデルマウスを用いて、IFN/STATシグナル経路の関与を個体レベルで解析するために、ゲノム編集による遺伝子改変に着手した。 一方、大腸がんでは4割程度の患者にRAS遺伝子変異が生じ、この遺伝子変異を持つ腫瘍はEGFR阻害剤耐性となることがしられている。このことと一致して、42個のオルガノイドのうち、KRAS変異をもつものは耐性となり、それ以外はすべて感受性であった。興味深いことにKRASの下流に存在するMEKに対する阻害剤では、KRAS変異をもつオルガノイドが耐性となり、残りが感受性を示した。この現象における患者間の遺伝学的背景を検討するために、耐性/感受性の患者由来オルガノイドのpathway解析を行なったところ、興味深いことにIF/STATシグナルが強い相関を示した。以上の結果は、IFN/STATシグナルが造腫瘍性のみでなく、MEK阻害剤感受性にも関与する可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
造腫瘍に強い相関を示すシグナル経路が同定されたことにより、ゲノム編集による遺伝子改変マウスの追加変異導入に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
モデルマウスを用いたIFN/STATシグナルの造腫瘍性における役割を個体レベルの解析により明らかにする。 さらに、MEK阻害剤に対する感受性を規定する因子の探索と細胞内シグナル経路の解析を進める。
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