研究課題
がん患者より分離したがん浸潤リンパ球由来TCRが認識する抗原を同定する基盤を確立するために、1)がん細胞特異的TCRの取得、2)TCRの抗原同定、3)同定したペプチドからの抗原タンパク質予測、4)試験TCRの反応性の検証、の4工程を計画した。2019年度は、2018年度に行っていた1と2を引き続き行った。がん細胞特異的TCRの取得のために、21症例の大腸がん患者、10症例の乳がん患者より分離した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)由来CD8+/PD-1+細胞のTCRレパートリーを解析した。これら細胞は、同一TCR遺伝子を発現するT細胞が見いだされたことから、クローナルに増殖していることが示された。クローナルに増殖していたTIL由来TCRが、プライマリーのがん細胞に反応するか検討した。次に、Cancer Tissue-Originated Spheroid (CTOS)法を用いて、試験TCRに対する標的細胞の樹立を行った。先に単離したTIL由来TCRに対する標的細胞への反応性を、TCRを導入したT細胞を用いて検討した。その結果、2018年度より1種類増え、計2種類のがん患者のTIL由来TCRが、その患者由来CTOSに反応し、IFN-γの産生が認められた。現在これら腫瘍に反応したTCRのHLA拘束性を解析している段階である。
3: やや遅れている
がん細胞特異的TCRの取得のための基盤が確立できたこと、また、TCRの抗原を同定するために必要なペプチド/MHC-テトラマーの作製技術が確立できたことで、本研究遂行に向けた基盤技術を整えることができた。これらの基盤を元に、さらなるがん細胞特異的TCRの取得と、そのTCRの抗原同定を進めることが行えるようになった。一方で、今までに得られた腫瘍反応性TCRの数が2種類であること、HLAの拘束性が現段階では決められていないことから、やや遅れている、とした。
2019年度まで得られたTCRのHLA拘束性を解析し、行程の抗原同定へと進めていく。一方で、得られたTCRを用いて抗原同定が行えないことも想定し、別の研究課題で得られたTCR様抗体の抗原同定/抗原交差性を解析することを検討する。
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