研究課題/領域番号 |
18H02692
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武藤 学 京都大学, 医学研究科, 教授 (40360698)
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研究分担者 |
奥野 恭史 京都大学, 医学研究科, 教授 (20283666)
大橋 真也 京都大学, 医学研究科, 助教 (20435556)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | VUS / HER2 / がんクリニカルシークエンス |
研究実績の概要 |
研究計画調書に記載した通り、がんクリニカルシークエンス検査において検出される、生物学的・臨床的意義が不明な遺伝子変異 (Variants of Uncertain Significance, VUS)に関し、当院の遺伝子パネルで検出された大腸癌症例のHER2 VUS(G776S変異)を例にしてその生物学的機能解析、また、その遺伝子(HER2)を標的とする治療薬の効果について検討を進めた。 まずプラスミドベクター(pCDNA3.1)にヒトHER2野生型遺伝子を導入しHER2野生型(WT)発現ベクターを作成した。さらにこのベクターに部位特異的な変異導入を行うことでHER2 G776S変異を導入し変異型ベクターを作成した。これらのベクターを大腸癌細胞株(COLO320)にそれぞれ遺伝子導入し、HER2 G776S変異導入株とHER2 WT発現株(変異導入株に対するコントロール細胞)を樹立した。 また、HER2 G776S変異型蛋白とHER2標的治療薬との立体構造上の親和性に関して、スーパーコンピューターを用いたin silicoシミュレーション解析を行った。HER2チロシンキナーゼ阻害薬(HER2-TKI)であるアファチニブやネラチニブはHER2 G776S変異蛋白に対し親和性が高いことが明らかとなったが、別のHER2-TKIであるラパチニブには親和性が低いことが示され、ラパチニブはこのHER2 G776S変異に対して有効性が低い可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記載した内容に応じ、HER2 WT発現細胞株とHER2変異(VUS)導入細胞株を樹立することができた。また、in silicoのシミュレーション解析によってHER2 VUSに対する有効薬剤を検証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画書に記載のとおり、樹立したHER2 WT発現細胞株とHER2 G776S変異導入細胞株を用いて、細胞増殖速度、足場非依存性増殖能、下流シグナル蛋白の発現やリン酸化、さらにはHER2阻害剤などの薬剤感受性をin vitroで検討する。また免疫不全マウスを用いて同細胞由来のXenograft腫瘍を作成し、これらの定着率や腫瘍の増大速度を比較してG776S変異の機能解析や薬剤感受性に関する解析を行う予定である。 また、キナーゼ活性を有する遺伝子変異の機能解析やその阻害薬の探索に用いられるBa/F3細胞(インターロイキン3依存性マウスリンパ系細胞株)を用いて、同ベクターを導入することでHER2 VUSの生物学的機能の評価や有効薬剤のスクリーニングを行う。
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