研究課題
食道癌関連microbiome(Fusobacterium nucleatum等)を用いた機能解析により、食道癌の抗癌剤耐性、浸潤・転移への影響とそのメカニズム解明を目指し、microbiomeをターゲットとした創薬のためのシーズを探索することが本研究の目的である。食道癌データベースを用いて、Fusobacterium nucleatumと抗癌剤感受性との関係を評価したところ、Fusobacterium nucleatum陽性例では有意に抗癌剤(5-FU,CDDP)に抵抗性であることが明らかになった。抗がん剤治療効果については、RECIST、治療前後でのSUV max変化、tumor regression gradeで行った。次に、Fusobacterium nucleatumと癌細胞株共培養の条件設定を行った。興味深いことに、Fusobacterium nucleatumが癌細胞内へ侵入する様子を電子顕微鏡でとらえることができた。また、それらの細胞では特異的にautophagosomeが観察され、autophagyが誘導されていることが示唆された。抗癌剤の添加実験において、Fusobacterium nucleatumがautophagyの誘導を介して、抗癌剤抵抗性に寄与していることを明らかにした。また、臨床データベースにおいても、Fusobacterium nucleatumとautophagy (ATG-7 expression)との関連が示された。現在、この論文は国際誌に投稿中であり、revise実験を行っている。腸内細菌叢はプロバイオティクス(Probiotics;人体に有益な腸内細菌叢ならびにこれらを含む食品・製品)やプレバイオティクス(Prebiotics;腸内細菌叢のバランスを改善する作用がある物質)により後天的に変化させることができる。今後の研究において、消化器癌進展におけるFusobacterium nucleatumの役割がより詳細に解明されれば、がん治療の新たな創薬に繋がる可能性があると考えている。
2: おおむね順調に進展している
食道癌データベースを用いて、Fusobacterium nucleatumと抗癌剤感受性との関係を明らかにすることができた。また、in vitroの実験においても、その関係を実証することができ、またautophagyを介したメカニズムも解明することができた。現在、この論文は国際誌に投稿中であり、revise実験を行っている。よって、おおむね順調に進展していると考える。
現在までmicrobiomeの中でもFusobacterium nucleatumに注目して抗癌剤感受性との関係を明らかにしてきたが、今後は網羅的な16S rRNAシークエンスでの解析を行っていく予定であり、そのための準備・サンプル採取も順調に進んでいる。その解釈・解析等については、消化器癌におけるmicrobiome研究の世界的リーダーであるDana-Farber Cancer InsituteのDr. Shuji Oginoとも適宜連絡をとり、必要に応じてsuggestionを受けることができる。また、validationが必要な場合には、The University of Texas MD Anderson Cancer CenterのProf. Jaffer A. Ajaniの協力を得ることができるように適宜連絡を取っている。
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