研究課題/領域番号 |
18H02698
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 元 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80236017)
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研究分担者 |
安藤 隆幸 静岡県環境衛生科学研究所, 医薬食品部, 主査 (40402226)
村手 隆 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (30239537)
新美 敦子 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (50508984)
竹内 俊幸 藤田医科大学, 医学部, 助教 (20538483)
水谷 泰嘉 藤田医科大学, 医学部, 助教 (10546229)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺癌 / 転移 / スフィンゴ脂質 / セラミド / 転移 |
研究実績の概要 |
細胞骨格制御: 細胞遊走はがん転移の主要プロセスであり、細胞骨格を構成するたんぱく質アクチンのダイナミックな解離と重合プロセスによって推進される。我々は、昨年度までにCERS6が、がん遊走/転移能と逆相関するアクチンストレスファイバー発達を負に制御することを見出している。このプロセスにおけるCERS6/C16セラミドの関与を明らかにするため、CERS6下流エフェクターたんぱく質として同定したaPKC (atypical Protein Kinase C)ファミリーの分子種を特定することを目的として、aPKCζ, ιの特異的ノックダウンと、その際、CERS6代謝産物セラミドを用いたレスキュー実験を行った。興味深いことに、私たちの使用している抗aPKCζ抗体はaPKCζ, ιを認識することが明らかとなった。また、aPKC ιに対する特異的siRNAはaPKCζに対するものに比べて、aPKCの減少量が多かった。ストレスファイバーに対する影響は、aPKCζについては明らかであったがCERS6ノックダウンと比べて。また、セラミドはsiRNAの効果を部分的に相補した。このことより、CERS6の下流経路にはaPKC以外のたんぱく質がかかわっている可能性が示唆された。
がん免疫: NKT(natural killer T)はαGalCerによるin vitro賦活化機構が知られるが、人体の賦活化抗原はCERS6下流糖脂質C24:1 GlcCerである。がん進展/転移過程でCERS6が下流代謝産物C24:1 GlcCerを介してNKTを抑制する仮説の下、NKT細胞と樹状細胞をC24:1 GlcCer、あるいは各種がん細胞抽出液と共培養することで、CERS6によるNKT抑制化機構を検討したが、現在のところ明らかな結論は出ていない。
がん転移抑制剤開発:既に実施した2万7000化合物化合物の結果を精査し、CERS6阻害活性を有した化合物クラスターの類縁体100化合物をもちいた阻害活性をしらべ、阻害活性のコア骨格を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画である細胞骨格制御、がん免疫、がん転移抑制剤開発の研究を実施した。がん免疫に関しては今のところ明快な結果が得られていないため、実験系の再検討あるいは仮説の見直しが必要である。一方、細胞骨格制御とがん転移抑制剤開発に関しては、当初の予想に沿った結果が得られており、計画に修正を入れることなく次年度以降さらに研究を発展させ、継続していく。一部予想と異なる結果が出ているところもあるが、全体として、結果は想定範囲内であり、順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞骨格制御:初年度の結果より、CERS6下流にはaPKC以外の分子が関与している可能性が示唆された。未知の経路の抽出につながる発見であり、平成31年度はこの経路に注力する。細胞抽出液中でCERS6を免疫沈降し、結合たんぱく質につき質量分析計を用いて解析、同定する。候補タンパク質に対して個別に結合解析を行うとともに、細胞染色等の手法を用い、結合の有無を確認する。結合が確認された分子に対してはさらに解析を進める。 がん転移抑制剤開発:これまで、CERS6阻害剤としての候補となるコア骨格を得て、生化学、細胞レベルで候補化合物の有用性を確認している。平成31年度はこの化合物をマウスに投与し、動物レベルでも転移阻害効果があるか否か検討を行う。
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