研究課題/領域番号 |
18H02699
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
角田 慎一 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (90357533)
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研究分担者 |
井上 雅己 神戸学院大学, 薬学部, 助手 (80757097)
永田 諭志 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (40246682)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | TNFR2 / APP3 / Treg / MDSC / がん免疫療法 |
研究実績の概要 |
本研究では、制御性T細胞(Treg)/骨髄由来抑制細胞(MDSC)の機能とTNFR2-APP3シグナルの連関を解明するとともに、TNFR2-APP3シグナルの低分子制御薬の探索を通じて、がん免疫抑制 機構におけるTNFR2-APP3シグナルの意義を解明することを目的とする。令和元年度は、Treg/MDSCにおけるTNER2-APP3シグナルの機能解析を進め、下記の成果を得た。 ①TNFR2-APP3シグナルとTreg/MDSC機能の連関解析: マウスに加え、ヒトでのTregとTNFR2との連関を調べるため、PBMC由来のTregを用いてTNFR2の発現レベルを解析した。その結果、ヒトのTregの中でもエフェクターTreg(CD25+CD45RA-)として知られる分画でTNFR2が高発現していることが判明した。一方、Tregの機能におけるTNFR2シグナルの意義を解明する一環として、免疫抑制能との関連について解析を行った。Tregが産生する抑制性サイトカインとして知られるIL-10との関連を調べたところ、マウスTregにTNFR2アゴニストを作用させるとIL-10の産生が促進することが明らかとなった。また、TNFR2-KO及びAPP3-KOマウス由来のTregでは、エフェクターであるTconvに対する増殖抑制作用も野生型Tregに比べて低下していることが判明した。 ②TNFR2/APP3のin vivo機能解析: APP3-KOマウスを用いてin vivoでのTregとTNFR2-APP3シグナルの関与を解析したところ、APP3-KOマウスのリンパ節ではTregの割合が減少していたことから、APP3がTregの分化増殖に関与していることが示唆された。 ③TNFR2-APP3シグナルの制御による抗腫瘍免疫の検討: TNFR2-KOマウスの皮下にB16メラノーマを移植し、腫瘍増殖を観察したところ、野生型マウスに比べて増殖が有意に抑制された。また、腫瘍浸潤細胞をフローサイトメトリーで解析した結果、TregやMDSCの浸潤も野生型マウスの腫瘍に比べて少なかったことから、TNFR2はTregやMDSCを介する腫瘍免疫抑制に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度には、前年度に引き続きin vitroでの解析及びマウスin vivoでの解析を行い、TNFR2とAPP3がTreg/MDSCの機能に関わる知見を得ることができた。また、TNFR2が腫瘍免疫抑制に関与している可能性を示唆する知見も得られつつあることから、概ね計画通りに進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、TNFR2-APP3とTreg/MDSCの機能との連関解析をさらに進めるとともに、APP3-KOマウスを用いて、腫瘍免疫とTNFR2-APP3シグナルの関連を明らかにする。また、マウスだけでなく、ヒトTregやヒト腫瘍組織を用いた解析も試みる。一方、TNFR2-APP3シグナルの阻害薬探索のため、低分子薬スクリーニングのためのアッセイ細胞の構築も進める予定である。
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