DNA脱メチル化治療は血液腫瘍で実用化され、米国では固形腫瘍での臨床研究も盛んである。一方、効果予測マーカーで信頼性が高いものはなく、DNA脱メチル化剤の作用機序にも不明の点が数多く残る。申請者は、胃がん細胞株を処理した際の高感受性と関連するlong-noncoding RNA linc00162 (lnc162)を同定した。lnc162の過剰発現は5-aza-dCに対する感受性を増強、ノックダウンは低下させることも確認した。本研究では、lnc162の高発現が5-aza-dCに対する感受性を増強する分子機構を解明する。 昨年度までにlnc162と相互作用する因子等の同定し、その高発現が感受性を増強する機構の解明は終え、論文を刊行した。そこで、今年度は、【Aim 2 : 他の固形腫瘍におけるDNA脱メチル化作用機序の解明】に関して、lnc162を介したDNA脱メチル化剤の作用機序が他の固形腫瘍においても普遍的であるかの検討を進めた。昨年度までに、当該研究者自身の他の研究で、神経芽腫・骨肉腫に対する5-aza-dC治療の有効性を示したため、新たに脂肪肉腫等を標的として研究を行った。脂肪肉腫細胞株LP6とLPS12を用いて5-aza-dC治療への感受性を検討した。未処理細胞ではlnc162は発現が抑制されていたが、5-aza-dC処理によってLP6では26倍、LPS12では61倍と顕著な発現上昇が観察された。脂肪肉腫においては、DNA脱メチル化剤の投与で感受性増強因子lnc162が発現し、効果が発揮されることが示唆された。本研究に関連する発表を、原著論文及び日本語総説として発表した。
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