研究課題/領域番号 |
18H02705
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高橋 淳子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (80415702)
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研究分担者 |
森 崇 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (40402218)
岩橋 均 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60356540)
長澤 慎介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80835025)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射線力学療法 / 放射線治療 / 放射線増感剤 / 5-アミノレブリン酸 / プロトポルフィリン / 活性酸素 / 担癌マウス |
研究実績の概要 |
腫瘍親和性光増感剤のポルフィリン類化合物に、光を照射すると生成する活性酸素の細胞損傷効果を利用した「光線力学療法」が、がん治療法に用いられつつある。一方、提案者らは、プロトポルフィリンIX(PpIX)がX線との物理化学応答により活性酸素を生成することを見出し、光の替わりにX線を用いる「放射線力学療法」の研究開発に着手した。5-アミノレブリン酸(5-ALA)を蛍光投与すると腫瘍細胞に選択的にPpIXが蓄積することは既に知られており、5-ALAは光線力学診断剤として臨床で用いられている。この為、「放射線力学療法」の実現の可能性は高く、かつ既存の放射線療法と比べ、同線量での治癒率の向上、また低線量治療の可能性から臨床応用が期待される。 提案者らは、各種担癌モデルマウスを用いて、PpIXの5-ALAの事前投与が、X線単独処理よりも効率良く遺伝子を損傷し、高い腫瘍増殖抑制効果を示すことを検証してきた。さらに、臨床応用を進めるには、非臨床的に有効性を示すだけでは不十分である。そこで本課題では、5-ALA - PpIX -X線の生体内作用メカニズムを検証し、線量低減効果の定量的な評価を行い、臨床応用の基盤を構築する。 2019年度は抗腫瘍免疫効果に着目したin vivoメカニズム検証を目的として、アブスコパル効果の評価のための担癌マウスモデルを作成し、5-ALA併用効果を検証した。アブスコパル効果とは放射線治療において標的の腫瘍を縮小させるだけでなく、離れている未照射の腫瘍も縮小させるという現象であり、抗腫瘍免疫効果に起因する現象と考えられている。マウスの左右に腫瘍を移植し、その片方に照射しもう一方を観察するというモデルを作成し、5-ALAの効果を確認したところ、X線単独より非照射の腫瘍の増殖が抑制される傾向がみられるという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各種増感剤の放射線応答性の評価をした結果、当初の予想に反し、増感剤の種類によって異なる応答を示すことが判明した。研究遂行上、その解明が不可欠であった為、HPLC法の確立を行い、HPLC法による検証を追加して実施した為、計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
アブスコパルモデルマウスを用いた検討により、抗腫瘍免疫効果の可能性が見出された為、引き続きメカニズムの検討を行う。
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