研究課題/領域番号 |
18H02710
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
黒田 公美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (90391945)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 母性行動 / 養育行動 / 行動試験 / 高架式十字迷路 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度準備した、CLRプロモーターでCreタンパク質を発現するトランスジェニックマウス(CLR-Cre-Tg)を用い、本実験である養育行動に対するCLR発現ニューロンの機能阻害を行った。具体的には、Cre依存的テタヌストキシン等をAAVウイルスでMPOAに導入しCLR発現ニューロンの機能を抑制した状態で、未経産メスマウスと母マウスにおいて、いずれも、子集め行動、巣作り行動などの養育行動に顕著な障害が認められた。 さらに、CLRのShRNAをアデノ随伴ウイルスベクターで発現するAAVウイルスコンストラクトからウイルスを作成、MPOAにInjectionした。この操作により、内在性CLR自体の発現が60%に低下した。この状態で、母性的養育行動の影響を調べたところ、ホームケージにおける行動、また交尾、出産、授乳などのFemale reproductive functionsには大きな影響はなかったが、高架式十字迷路Elevated plus maze上で子集め行動を行わせる、ストレス環境下での養育行動において、障害が認められることが明らかになった。一方で、子がいない状況における高架式十字迷路上でのLocomotor activity, Open arm timeなど一般的な行動には影響がない。このことは、CLR分子の発現抑制が不安行動に影響を与えて2次的に養育行動異常をもたらすのではなく、養育行動に特異的な効果があることを示す。
これらのことから、次のことが言える。(1)CLR発現ニューロンが養育行動に必須の働きをすること、(2)CLR分子自体の機能として、母親になった際、ストレス状況下においても高い子育て意欲を維持するために機能する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はほぼ当初の予定通りで、順調に進捗しているが、新型コロナウイルスの影響で、3月後半からの進捗には遅れが発生している。 具体的には、4月1週目から全面在宅勤務となった関係で、予定していたアミリンCreマウスの繁殖・飼育などが滞っており、いまだ解消していない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、作成中のアミリンプロモーター下でCreを発現するトランスジェニックマウスを用い、AAVウイルスベクターを併用してアミリン発現ニューロンの機能抑制や活性化を行い、ホームケージ、および高架式十字迷路上での養育行動への影響を、CLR分子の発現抑制と比較して検討する。 そしてこれらの結果を総括し、論文としてまとめ、投稿し採択されることを目指す。
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