研究課題/領域番号 |
18H02712
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山崎 由美子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 副チームリーダー (20399447)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 向社会的行動 / 自律神経機能 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
2頭のマーモセットが、ガラス越しにお互いを見ながら実験に参加する装置を用い、(1)各ペアの他者への関心の高さについて、社会的感覚強化実験を用いて評価し、(2)(1)で測定された関心の高さが、相手との社会的関係や性別が変わった時どのように変化をするか、についてテストを行い、(3) 3刺激の選択の結果が利己的・互恵的・利他的となる弁別訓練を行った場合、相手によってどのように選択を変えるか評価し、(4)利己的選択を行った場合、その相手に互恵的選択をさせることによって、選択が向社会的方向に変わるかどうか検証する。(5)これらの選択判断時に生じている心拍数、呼吸数、血圧など生理的変化をモニタリングし、(6)実験直後の糞便の腸内細菌の分析を行い、自律神経にも影響を与える腸管における細菌生態系と向社会的判断との相関を調べる。 本年度は本訓練に向けた準備として、各被験体にタッチパネルへの反応を形成した。タッチパネルに近づく行動を餌強化子によって強化し、次に画面上に提示された直径5cmの円に近づいた行動のみ強化するように基準を狭め、この基準を逐次変えることにより円にタッチする行動を形成した。この円を本訓練で使う大きさにまで小さくし、提示場所を毎回変えても画面上の円を見つけ遅延時間なく反応するように訓練した。反応形成課題を各個体に訓練し、2頭をそれぞれを実験箱に入れ、ガラス越しにお互いを見られる条件において、同様の反応が安定するまで訓練した。 今後、各種生理指標を取得するためのテレメトリシステムを購入し、既存の行動実験装置を用いてデータが取得できるよう、ノイズ低減のための電源部分改造、センサー受信部の配置調整など、ハードウエアの調整を行った。 腸内細菌叢解析への準備として、被験体からの糞便を採取し保存液に懸濁して冷凍保存し、腸内細菌の遺伝子解析および細菌叢構成の分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本実験に向けた予備的訓練を行うこと、本実験で使用する装置の導入に向けた準備と調整を主な課題としていた。行動実験装置は既存のものを使うことができたため、研究開始とともに実験を進めることができた。装置の購入も交付決定後すぐに選定と手続きを始めたことにより、年度の前半におおよそのめどを立てることができ、後半は購入手続きと購入後の調整のための時間に充てることができた。腸内細菌叢解析は、マーモセットに特化したライブラリがあるわけではないため、どのくらい細菌種の同定ができるか不明であったが、予備実験を行ったところ、十分な数の種の同定が可能であることが判明したため、このプロトコルで本実験の実施へと進めることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、行動実験では本訓練課題を進めていくことになる。個体によっては視覚的な社会刺激の有無が行動に影響を及ぼさないことも予測できる。そのような場合、選択反応のみならず、反応時間や、セッションを通した反応パターンの変化など、複数の指標を用いて評価できるように対応していく予定である。昨年度末に研究室の移転があり、マーモセットコロニーもそれに伴い移動を行ったため、環境の大幅な変化があった。このような状態で実験を早期に再開しても、途中で体調不良になり、先に進めなくなる可能性があるため、新環境への適応が十分と確認されてから、実験を再開することにしたい。
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