研究課題
本研究課題は、2頭のマーモセットが、電圧により透過性の変わるガラス越しにお互いを見ながら実験に参加する装置を用い、(1)各ペアの他者への関心の高さについて、社会的感覚強化実験を用いて評価し、(2)(1)で測定された関心の高さが、相手との社会的関係や性別が変わった時どのように変化をするか、についてテストを行い、(3) 3刺激の選択の結果が利己的・互恵的・利他的となる弁別訓練を行った場合、相手によってどのように選択を変えるか評価し、(4)利己的選択を行った場合、その相手に互恵的選択をさせることによって、選択が向社会的方向に変わるかどうか検証することを目的としている。本年度は、他者への関心がどのくらい強いかを評価するための「社会的感覚強化実験」の本訓練を進めた。異なる図形を用いた2選択場面において、選択の結果が(1)餌だけ、(2)餌と他個体が見える、の2条件を用い、40試行x12セッションを1セットとした弁別訓練を行った。図形の随伴性を逆転させ2セットずつ、計4セットの訓練を行い、訓練終了後、同じ随伴性のまま、実験参加パートナーを(a)家族内のメンバー、(b)家族外の同性、(c)家族外の異性の3つの条件によってテストした。その結果、年齢および性別に応じて、社会的感覚強化選択肢を選ぶ確率は異なった。例えば、つがい相手のいない繁殖可能な年齢のメスは、性成熟後のオスの出現によって社会的感覚強化選択が上昇した。生理指標取得用テレメトリシステムの体内留置操作の準備実験を行った。ラットを用い、麻酔下において被験体の腹部動脈内にカテーテルを挿入し、腹部皮下にテレメトリを留置し、マーモセットに応用した場合の条件の検討を行った。糞便を用いた腸内細菌叢解析のデータ処理法の検討を行った。細菌叢の構成に関して、主座標分析や多様性指標が、個体間の違いを表すのに適していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
これまでに集積した、装置やプログラムについてのノウハウを十分に生かすことができ、セットアップと基礎的な訓練のための時間が短縮できた。行動実験の本訓練には通常非常に長い時間がかかり、本研究課題でも個体によって、訓練完成までにかなりの差が生じているが、準備の時間を短縮できたことにより、おおむね計画通りのスケジュールを守れている。テレメトリーの体内留置、および腸内細菌叢解析については、経験者や専門家からアドバイスをもらうことができたため、あらかじめ問題となるような点を絞って検討することができた。
COVID-19対策のため、現在実験計画の大幅な変更を余儀なくされている。本研究は実験動物を対象としているため、動物の飼育管理をこれまでの安定した条件で継続できるかどうか、継続できなかったとしてそれをいかに早く回復させられるかが、今後研究活動を完全な形で再開した場合の鍵となると考えられる。そのため、研究活動が完全に休止となった場合にも、動物の健康状態の把握と、問題発生時の迅速な対応を最優先に考え、準備をしておくつもりである。
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巻: - ページ: -
10.21203/rs.2.16626/v1
Neuroscience Research
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10.1016/j.neures.2019.11.010