研究課題/領域番号 |
18H02714
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小泉 愛 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任講師 (60588953)
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研究分担者 |
柴田 和久 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (20505979)
土谷 尚嗣 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (80517128)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 恐怖記憶 / 皮質 / 視覚 / fMRI |
研究実績の概要 |
本研究は、恐怖記憶形成における皮質感覚野の機能的役割を検証することを目的とする。昨年度は、日常的な経験を通して「怖い」という意味づけがなされた恐怖表情を題材に、その知覚や予測に関する処理が視覚野や視床でどのようになされているのかを、高解像度の7T-fMRIを駆使して明らかにした。7T-fMRIを用いて脳活動を計測することにより、一般的に用いられる3T-fMRIよりも3から4倍の空間的解像度を実現することができた。それにより、通常は切り分けることが難しい視覚野の皮質層ごとの活動を推定することが可能となり、恐怖の知覚や予測に関する視覚野と視床の詳細なインタラクションをとらえることができた。また、恐怖表情の知覚と喜び表情の知覚に関わる脳活動を比較することにより、本研究の結果が恐怖知覚に特異的であることを突き止めた。なお、本研究は、オランダ・マーストリヒト大学の脳科学者らと連携し、こうした最新の7T-fMRI計測技術と解析技術を開発・駆使した。
上記の研究成果は、国際学会(Social Affective Neuroscience Conference)にて発表賞を受賞した他、BioRxivに論文をデポジットしており、 現在国際論文にて査読中である。
本年度以降は、事故などの日常生活にて実際に形成された恐怖記憶が、皮質感覚野の体積等にどのような影響を与えるかを、医療関係者とともに検証し、恐怖記憶形成のメカニズムを探るとともに、将来的な効果的な介入に向けて示唆を与える知見を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の初期段階の成果はすでに論文投稿済み(査読中)であり、次のステップとして医療関係者との研究推進体制をすでに整えている。このように、基礎から臨床へと円滑に研究を発展させている状況は、当初の計画よりも早いペースであり、計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究は、とてもマイルドな恐怖を対象とした基礎研究の範疇であったが、本年度以降は、事故などの日常生活にて実際に形成された恐怖記憶が、皮質感覚野の体積等にどのような影響を与えるかを、医療関係者とともに検証する。それにより、実際のPTSD患者に見られるような強度の強い恐怖記憶形成のメカニズムを直接的に明らかにできるのみならず、将来的な効果的な介入に向けて示唆を与える知見を構築することにも繋げられる。
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