研究課題/領域番号 |
18H02715
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
石川 欽也 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 教授 (30313240)
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研究分担者 |
柳原 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90252725)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RNA / 小脳 / Purkinje / タンパク / TDP-43 |
研究実績の概要 |
脊髄小脳失調症31型(SCA31)は、BEAN遺伝子のイントロン内にTGGAAの5塩基が1.25~2Kbに及ぶ長いリピートとして存在することを原因とする、我が国において最も頻度が高い脊髄小脳変性症の一つである。本研究ではこの疾患の病態を理解するために患者の異常リピートを含むゲノム領域をマウスゲノムに導入した、BACトランスジェニックを解析し、SCA31の病態理解を深める。そのために、本研究ではSCA31患者由来のゲノムを有し、BEAN遺伝子のイントロン内に存在する5塩基(TGGAA)の繰り返し配列が存在するSCA31-BAC Tgモデルマウスを解析してきた。本書類はこの研究の2年度目に当たる。 これまでの研究で、このマウスに繰り返し歩行解析をすると運動を学習する効果があり、逆に、高齢であっても初めての条件で歩行を解析することで異常を検出できる可能性を見いだした。このため、67週で表現型を解析してからその個体の遺伝子発現を解析することとした。 SCA31-BAC Tgモデルマウスの個体を67-68週に固定し、同一ラインの雄マウス個体を15匹用意し、順次共同研究者柳原博士に個体を移送し、同一個体数の野生型対照マウスと歩行を比較する解析を実施した。歩行解析は、検査者は遺伝子型を知らないブラインドの状態で組み、10往復のラダー歩行、定速式rotarodおよび加速式rotarodの3系統の解析を実施した。その結果、野生型13匹、SCA31-BAC Tgモデルマウス9匹について解析を完遂し、定速式rotarodでの平均滞在時間と最大滞在時間、加速式rotarodでの平均滞在時間と最大滞在時間などに有意な差を見いだした。これらの個体について、sacrifice後に脳内の遺伝子発現解析をRNA-seqで実施した。当該年度は実施まで終了し、詳細な解析は次年度に実施することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作製したSCA31-BAC Tgモデルマウスの表現型が、高齢ではあるが68週齢で確認された。この週齢での個体を3個体ずつRNA-seq解析を実施した。その結果、十分なリード数を得る妥当な基礎データを得た。併行して野生型の同週齢の個体についても解析をし、年度終了時点で両方の基礎的データを得ることができた。 また本研究は、SCA31の原因となるUGGAA【RNA】が、その【結合蛋白】TDP-43とのバランス関係が崩れるために発病することを検証することも目的としている。このため、Purkinje細胞においてTDP-43が選択的に欠失しているconditional TDP-43 KOマウスについても、RNA発現を解析し、その異常がSCA31-BAC Tgモデルマウスでも確認できることを目標としている。本年度はこのマウスに関してもRNA-seqを実施し、基礎的データを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度に進めて得ることができたRNA-seqの基礎データを、解析する。特にモデルマウスで異常が見られた時期のRNA発現異常に、RNAとRNA結合バランスの破綻と言う視点から、RNAであるUGGAAとその結合蛋白であるTDP-43およびFUS、hnRNPA2/B1などとの関連を、これらRNA結合蛋白の影響を受け得る下流の遺伝子におけるスプライス異常を中心に検索する。TDP-43については、TDP-43の欠失モデル(conditional TDP-43 KOマウス)において行ったRNA-seqの結果と一致するSCA31-BAC TgモデルマウスのRNA異常を探索する。
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