研究課題
脊髄小脳失調症31型(SCA31)は、BEAN遺伝子のイントロン内にTGGAAの5塩基が1.25~2Kbに及ぶ長いリピートとして存在することを原因とする、我が国において最も頻度が高い脊髄小脳変性症の一つである。本研究では、この疾患の病態を理解するために患者の異常リピートを含むゲノム領域をマウスゲノムに導入した、SCA31-BACトランスジェニック(Tg)マウスを解析し、同マウスでの表現型が認められた時点での遺伝子発現をRNA-seqなどで解明することを通して、SCA31の病態理解を深めることを目標とした。これまでの研究で、SCA31-BAC Tgマウスの67-68週齢マウスでは、同一週齢の野生型マウスと比較して、定速式rotarodでの平均滞在時間と最大滞在時間、加速式rotarodでの平均滞在時間と最大滞在時間などに有意な差を見いだしていた。今年度は特注でマウス用のスプリットベルト・トレッドミルを作成し、同週齢の個体で歩行解析を行った。このスプリットベルト・トレッドミルでは、左右の脚がつくトレッドミル上のベルトスピードを変化させると、その状態に適応する運動学習の効果が解析できる。また、その後にスプリットベルトの速度を左右同一に戻した時にも生じる運動学習効果も評価できる。この2つの運動学習を検査したところ、確かにSCA31-Bac Tgマウスではある程度の運動学習が表れていることが明らかとなった。以上を総合して、67-68週齢の時点で、本マウスでは軽度の表現型が出現しているものと結論付けた。67-68週齢マウスでのRNA-seqを行いし、対照マウスと比較した結果、複数の遺伝子の発現変動を認めた。当該研究期間終了後ではあるが、SCA31モデルショウジョウバエなどで得られた結果と比較し、類似性のある分子病態を究明してゆく予定である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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