研究実績の概要 |
申請者らは約5ヶ月という脊椎動物で最短の寿命を持ち、かつ最速で老化するアフリカメダカ(N. furzeri)が、その短いライフコースの間に加齢とともにパーキンソン病の表現型を呈することを報告した(Matsui et al., Cell Reports, 2019)。アフリカメダカではパーキンソン病において蓄積するαシヌクレインを遺伝子編集で除去すると、パーキンソン病の表現型が改善するものの、脳以外の諸臓器は通常通り老化が進行する(Matsui et al., Cell Reports, 2019)。すなわち全身の老化と加齢関連疾患(この場合パーキンソン病)を分離することができる。核DNAの細胞質漏出と強い関連を持つ老化現象と、各臓器やシステムで引き起こされる加齢関連疾患は、完全には同じメカニズムで起こっているのではなくある程度分離可能な現象であると言える。 そのアフリカメダカおよびこれまでに作製解析した様々なパーキンソン病モデル、ヒト剖検脳症例を検討し、それらに共通の病態: 脳において『加齢とともにmtDNAが細胞質に漏出し細胞死を惹起する』可能性を見出した。具体的にはパーキンソン病モデルの小型魚類や培養細胞では細胞質にmtDNAが漏出し、タイプⅠインターフェロン(type I IFN)反応の亢進、細胞死を認める。Youle博士のグループからもPINK1/Parkin遺伝子改変のパーキンソン病マウスモデルにおいて、細胞質におけるDNA感知のkey分子の一つであるSTINGがその細胞死に関与していること、血液中にmtDNAが増加していることが報告されている(Sliter et al., Nature, 2018)。申請者らはさらにヒトパーキンソン病剖検脳においてもmtDNAが蓄積していること、細胞質DNAセンサーであるある蛋白が著増していることを報告中である。
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