研究課題
Ⅰ.研究の背景: パーキンソン病の病態にミトコンドリア機能障害やリソソーム機能障害が関わっていることは以前より言われてきましたが、その詳細なメカニズムはわかっていませんでした。Ⅱ.研究の概要・成果: 本研究では、リソソームなどでの分解から逃れたミトコンドリア由来の細胞質DNAが、パーキンソン病を模す培養細胞およびゼブラフィッシュにおいて細胞毒性および神経変性を誘導することを報告しました。培養細胞ではパーキンソン病に関連する遺伝子である PINK1、GBA、またはATP13A2の減少は、ミトコンドリア由来の細胞質DNAの増加を引き起こし、I型インターフェロン応答と細胞死を誘導しました。これらの表現型は、DNAを分解するリソソームDNaseであるDNase IIの過剰発現、またはミトコンドリアDNAのセンサーとして機能するIFI16の減少によって改善しました。パーキンソン病モデルゼブラフィッシュの1つであるgba変異体においても、ヒトDNaseIIを過剰発現させることにより、その運動障害とドーパミン作動性神経の変性が改善されました。IFI16およびミトコンドリア由来の細胞質DNAは、ヒトパーキンソン病患者さんの剖検脳の病変部位において蓄積を認めました。以上の結果は、ミトコンドリアDNAの細胞質漏出がパーキンソン病の神経変性の重要な原因となる可能性を示唆しています。Ⅲ.今後の展開: 細胞質に漏出したミトコンドリアDNAの分解、あるいはそのミトコンドリアDNAセンサーの阻害が、パーキンソン病の治療につながる可能性があります。またパーキンソン病以外の疾患でも同様のメカニズムが存在する可能性があり、引き続き検証を進めます。
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巻: - ページ: -
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