研究課題/領域番号 |
18H02718
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
津田 浩史 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (00792095)
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研究分担者 |
永井 義隆 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (60335354)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛋白質の品質管理機構 |
研究実績の概要 |
細胞内小器官の間の相互作用という先駆的な観点から、神経変性疾患における核の恒常性の破綻の分子メカニズムについて研究を進めた。細胞は恒常性を保つために細胞内の蛋白質の品質を管理している。その管理機構の破綻が神経変性疾患の病態に関与する。我々は、細胞内小器官(小胞体(ER)やミトコンドリアなど)の蛋白質の品質管理機構を解析し、その破綻が筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄小脳変性症(SCA)の病態に関与することを明らかにした。これらの成果により、核内の変性蛋白質が、核膜から形成される小胞により核外に排出されるという新しい現象を見出した。この核膜の小胞形成はERからのシグナルで制御され、ER-核の相互作用が核の蛋白質の品質を管理するという細胞生物学的にも新規のコンセプトである。本研究は、神経変性疾患の核病態を、ショウジョウバエモデルを用いて明らかにしてきた。今後、神経疾患のマウスモデルなどを用いて、加齢や神経変性の進行に伴った核病態が明らかにされることが期待される。また、本研究で解明した核内の蛋白質品質管理に関する分子メカニズムが、神経変性疾患だけでなく、他の疾患の病態にどのように関与するか明らかにされることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経変性疾患に共通する核病態を明らかにするために、複数の神経変性疾患ショウジョウバエモデルを用いて蛋白質の品質管理の破綻と核膜の動態をライブイメージングで解析した。この結果を受けて、核内の蛋白質の恒常性をさらに効率よく評価するために、ショウジョウバエで用いた評価系をヒト細胞培養に適応している。 また、ショウジョウバエモデルを用いて核膜の脂質イノシトール リン脂質(PI)の代謝を調節し、脂質代謝が神経変性疾患モデルの核病態にどのように影響するか解析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
神経変性蛋白質を発現するショウジョウバエの運動障害や致死性等の表現型が核膜でのPIの制御で抑制または増悪するかについて解析を行う。神経変性疾患で脂質PIの代謝制御が、神経変性の病態抑制につながるかを明らかにし、新しい治療法のシーズとしての可能性を検討する。
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