発作性運動誘発性ジスキネジア (PKD) は急激な動作で誘発される不随意運動を特徴とするが、運動機能を制御する大脳基底核とPKDの関連は分かっていない。大脳基底核の運動回路は、黒質から線条体へ投射するドパミン作動性神経により調節されることから、申請者はドパミン作動性神経におけるPKDの原因遺伝子PRRT2の役割を解析してきた。 令和2年度に計画していた「シナプス小胞の放出やリサイクリングの解析」は麻酔拘束下のマウスの線条体においてKCl連続刺激時のドパミン放出量をマイクロダイアリシスで定量するin vivo実験により行った。PKDに関連した変異を導入したPrrt2 KIマウスでは、KCl刺激により野生型よりも高い細胞外ドパミン濃度となったが、ドパミンを枯渇させた後、再度刺激を行った場合にも変異の有無に関わらず1回目と同程度の細胞外放出されたため、Prrt2変異はドパミンの再充填速度ではなく、充填量のキャパシティを増大させていると考えられた。よって、シナプス小胞の数またはサイズが増加していること等が想定された。 「大脳基底核におけるグルタミン酸 (Glu)及びGABAの細胞外濃度の解析」では、定常濃度はPrrt2変異による違いはないことを確認した。KCl刺激時のGlu及びGABAの細胞外濃度はPrrt2変異により増加したが、その上昇率はドパミンよりも小さかったため、PRRT2は特にドパミンの放出に寄与が大きいと考えられた。 本研究により、大脳基底核におけるドパミン放出量の増加がPKDの発症に寄与することが示唆された。さらに、申請者はPRRT2がドパミンの再取り込みにも影響するというデータを培養細胞系で得ており、これがin vivoで再現されるかを現在確認中である。
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