研究課題/領域番号 |
18H02721
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
新 竜一郎 宮崎大学, 医学部, 教授 (90452846)
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研究分担者 |
岩丸 祥史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, ユニット長 (20355142)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プリオン病 / 異常型プリオンタンパク質 / RT-QUIC法 / 培養細胞 / クロイツフェルト・ヤコブ病 |
研究実績の概要 |
プリオン病は病原体プリオンによって引き起こされる致死性の神経変性疾患であり、ヒトではクロイツフェルトヤコブ病(CJD)が代表的な疾患である。CJDに対する有効な予防・治療法は現時点では存在しないため、その開発が切実に求められている。これまでCJDプリオン増幅機構の解明と予防・治療法の開発に必須であるCJDプリオン持続感染培養細胞の樹立は達成されていなかった。本研究では、CJDプリオンが培養細胞で持続感染する際に必要な補助因子や条件を同定し、我々が開発した、高感度にプリオン活性を検出・定量できるRT-QUIC法(Real-time Quaking-induced conversion)を応用することにより、CJDプリオン持続感染培養細胞を樹立し、CJDプリオンの特性解析や増幅機構、さらにCJDに真に有効な薬物を見出すためのスクリーニング等を行い、新たな予防・治療法の創出を行うことを目的としている。これまでの研究により、数種類のヒトグリオーマ細胞あるいはニューロブラストーマ細胞を入手し、その増殖特性や正常型プリオンタンパク質(PrP)の発現レベルとPrPの配列の多型の解析を行った。その結果、ヒトグリオーマ細胞の多くがPrPを高レベルに発現していることが判明した。また増殖特性については細胞毎に大きな差が見られることも明らかになった。現在、それらの細胞にCJD患者由来の脳乳剤を曝露し、それらが持続的にプリオンに感染するかについてウェスタンブロット法や試験管内プリオン高感度増幅法を用いた検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数種類のヒトグリオーマ細胞あるいはニューロブラストーマ細胞を入手し、その増殖特性や正常型PrPの発現レベルとPrPの配列の多型の解析を行い、ヒトグリオーマ細胞の多くがPrPを高レベルに発現していることが明らかになり、CJDプリオン感染実験のターゲットとして適していることが判明した。 それらの細胞にCJD由来の脳乳剤を曝露し、それらが持続的にプリオンに感染するかについてウェスタンブロット法や試験管内プリオン高感度増幅法を用いた検証を行っているが、数回まではプリオン活性が検出されるものの、その後、徐々に消失することが明らかになった。現在、補助因子候補の添加や培養細胞のクローニングによりプリオン活性が維持できる条件を検討している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
CJDプリオンの持続感染細胞樹立において異常型PrPの変換が培養細胞内で維持されるためには、変換速度が分解速度+細胞増殖速度を上回る必要がある。そのためには変換速度を上げる可能性のある補助因子(ポリアニオン等)あるいは分解速度を減少させる因子(オートファジー/ライソソーム阻害剤等)を添加した条件でCJDプリオン感染実験を行うことを考えている。また細胞をクローニングすることにより、個々の細胞によるCJDプリオン感受性の違いを評価し、最終的にCJDプリオン持続感染培養細胞の樹立を目指す。樹立後はただちにさまざまな候補薬物の評価を開始する予定である。
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