研究課題
癌(がん)関連疲労および癌性悪液質は、癌患者のQOLならびに予後を大きく左右する。申請者らは、これまでに大腸癌細胞の移植によって癌性悪液質病態を再現した担癌マウスにおいて、脳内で免疫応答を担当するミクログリアの活性化と、インターロイキン1bを含む炎症性サイトカインの持続的な発現上昇(神経炎症)が引き起こされていることを発見した。また、脳内に神経炎症を惹起すると、個体死にも繋がる急激な体重の減少と疲労行動が現れ、癌性悪液質に酷似する病態が再現されることも見出している。そこで、癌関連疲労や悪液質病態の発生には脳内の神経炎症が深く関わるとの仮説を立てた。本研究では、癌関連疲労や癌性悪液質の惹起に、脳内の神経炎症がどのようなメカニズムで関わっているのかについて明らかにする。本年度は担癌マウスでの悪液質の発症を客観的に定量評価するため、マウスの筋肉量を全身で測定できるX線CTでの全身撮像をおこない、筋肉や各臓器の体積の定量評価系を立ち上げた。また、担癌マウス作製後、悪液質の発症に至り、体重が低下していくまでの全身代謝の経時的変化を明らかにするため、同一個体から繰り返し血液を採取し、保存した。一方、移植した癌細胞集団をin vivo環境で細胞レベルの分解能でライブイメージングするためのファイバー型顕微内視鏡観察技術を昨年度完成させたが、本年度は本技術をさらに発展させ、癌細胞の増殖活性のみならず、血管、免疫細胞など、腫瘍の微小環境に関わる複数の細胞や組織構造を観察することに成功した。また、中枢神経組織を網羅的に評価できる広域電子顕微鏡技術を用いて、脳内神経炎症像を把握できることを確認した。さらに中枢神経系と腫瘍内微小環境との機能連関をつかさどっていると思われる自律神経機能を連続測定するシステムも完成させた。
2: おおむね順調に進展している
本研究で必須の腫瘍内細胞動態、中枢神経機能、自律神経、全身代謝を評価できる研究系を確立することができ、研究の各項目は前後するも、全体としては順調に進んでいると判断できる。
悪液質モデルマウスの中枢神経炎症をコントロールしたとき、マウス全身代謝や自律神経、腫瘍内細胞動態がどのように変化するかを明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 6件、 招待講演 10件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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