研究課題/領域番号 |
18H02725
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
篠原 充 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 室長 (60800521)
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研究分担者 |
村山 繁雄 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (50183653)
菊地 正隆 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (90722538)
赤津 裕康 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00399734)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病の原因とされるAβが「なぜ」、「どのように」ヒト脳内で蓄積するのか未だ不明である。我々は脳内のAβの特徴的な領域分布に着目し独自に剖検脳を解析することで、①シナプスがまず全長型Aβの蓄積に関与し引き金となり、②ついで何らかの別の因子がN末端の断片化したAβの蓄積を引き起こし臨床病理症状と結びつくこと、を見出し、提唱した(Shinohara et al., Brain 2017)。その分子的実態や臨床的意義をさらに解明するため本研究では、①シナプスがどのような機序で全長型Aβの蓄積に関与するのか、②断片化Aβがどのような機序で蓄積するのか、の分子的な詳細について、これまでの領域分布に着目した剖検脳解析とともに、新規in vivoマイクロダイアリシスを用いた動物モデル解析や、新規結合因子の同定、領域横断的な遺伝子ネットワークの構築、独自のex vivo分解系の導入、高感度ELISAの開発と臨床検体の解析などを通じて明らかにすることを目的とする。当該年度は、研究に必要な動物モデルや臨床検体の導入や倫理申請を進めるととともに、解析系、実験系の立ち上げ、導入などを行った。3年計画の1年目ということもありいくつかの問題にも直面し、十分な成果は得られてはいないが、残り2年で成果が得られるように私が関与している本研究以外の全体の研究内容・時間配分の見直しも行い、本研究に尽力したいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度における進捗点を以下に列挙する。 1.動物モデルの導入、繁殖をすすめ、hAPP-YACマウスやAPPノックアウトマウス各々のホモ化を予定通りに作製できた。それぞれの脳組織の回収も行った。2.断片化Aβに対するELISAを立ち上げた。またいくつかのシナプスマーカーに対するELISAも新たに立ち上げた。3.神経活動を評価するためのマイクロダイアリシスを当研究部で立ち上げ、APP Tgマウスで解析を行った。4.米国のデータベースから多数の脳領域を用いた遺伝子発現解析のデータを入手し、我々の蛋白発現解析と対応させることができるか検討した。5.福祉村ブレインバンクの臨床検体を利用する倫理承認を得るとともに、脳および脳脊髄液、血液を導入し、脳内Aβの量を定量し、AD患者では実際に一部の領域で断片化Aβが多いことを確認した。
その一方で、当該年度においていくつかの問題に直面した。以下に列挙する。 1.マイクロダイアリシスを用いた解析において、陽性コントロールとしていたAPP Tgマウスにて脳間質液中のAβの測定がELISAの検出感度以下となり、解決に時間を要した。現在その状況は改善しつつある。2.断片化Aβを検出するのに必要な質量分析装置が故障したため、関連した研究を進められなかった。現時点(2019年5月時点)では装置の問題はほぼ解決されている。3.遺伝子ネットワーク解析において、AD患者も解析している米国のAMP-ADデータベースでは多数の領域を解析しているものの、皮質領域が中心のため、皮質下領域を多く含む我々のデータと付随させることが難しいことが考えられた。4.全体的にみて、本研究に充てられる研究時間、人材の不足、当初予定していたほどの実験・研究時間を当てることができなかった。これらの諸問題から、当初予定していた研究計画を達成させることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していたが、あまり達成できなかった研究計画を特に重点的にすすめる。具体的には、1.マイクロダイアリシス実験回数の増加、2.修理した質量分析装置を用いた断片化Aβに関する実験の開始、3.遺伝子ネットワーク解析について他のデータベースの利用や自験データの獲得、4.本研究以外の全体の研究内容・時間配分の見直しも行い、本研究に充てられる時間を十分に確保する、などが考えらえる。また上手くいきつつある一部の研究については、さらにそれを利用、発展させ、成果として発表することにも十分尽力したいと考える。
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