研究課題
自己蛋白を標的とする治療ワクチンは、抗原による直接的な細胞障害性T細胞活性化による自己免疫疾患を避け、抗体誘導を主眼とした治療ワクチンである。この実用化開発は抗体医薬と開発コンセプトが重複するところが多く、将来的に抗体医薬と同等の有効性と安全性を安価に確保できるオプションを提供できる可能性がある。本研究課題は、慢性炎症制御という新しい切り口の治療薬の開発を目指し、我々独自の治療ワクチンのシステムを用いたアラーミンあるいはSASPを標的とした治療の有効性を検討した。1)S100A9 (S100 calcium-binding protein A9)ワクチンS100A8/A9(別名MRP8/14)はTLRやRAGEを介した炎症惹起作用を有する慢性炎症増悪のトリガー因子(アラーミン)として知られている。また、血管障害時の活性化された血小板から放出されCD36を介した血液凝固系の亢進により血栓形成に関与する。そこで、S100A9ワクチンを作成し、抗血小板作用をマウスモデルで検証した。2)老化T細胞(PD-1陽性、CD153陽性細胞)除去を目指した治療ワクチン近年、生体劣化制御法として老化細胞を取り除くという治療ストラテジー(Senolysis)が提唱され、Bakerらは薬剤によって老化細胞をアポトーシス誘導により除去しうる遺伝子改変マウスを作製し、老化細胞の除去が早老症モデルマウスや高齢マウスの様々な老化形質を改善するとともに、寿命を延長させると報告している。本研究では治療ワクチンにより誘導された抗体のエフェクター機能(ADCC活性、CDC活性など)による標的細胞への攻撃・除去作用を、Senolysisの治療ツールとして活用した。標的細胞として、CD153陽性老化T細胞を標的とした細胞除去ワクチンを作成し、高脂肪食負荷モデルで脂肪組織での老化T細胞の増加抑制と耐糖能改善を確認した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nat Commun
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