研究課題
本研究は、新規アディポカイン制御因子(AKRF)を同定し、アディポネクチンやオメンチンとAKRFとの複合体による動脈硬化発症機序を明らかにすると共に、複合体測定による動脈硬化の診断法と、AKRFをターゲットとした治療法の開発につなげることを目的とする。2018年度は、ヒト血清およびヒト血管内皮細胞からAKRFとして複数のケモカイン(未発表のためCCLxと表記する)を同定した。そして、Mycタグを付加したアディポネクチン(myc-APN)とFLAG タグを付加したCCLx (FLAG- CCLx)を発現させたHEK293細胞溶解液を抗myc 抗体で免疫沈降するとFLAG- CCLxはmyc-APNに共沈し、抗FLAG抗体で免疫沈降するとmyc-APNがFLAG- CCLxに共沈することから、両者の特異的な結合を確認した。次に、冠動脈疾患症例において、血清を抗APN抗体で免疫沈降し抗CCLx抗体でウエスタンブロットする系を用いてAPN- CCLx複合体を半定量した。血清CCLx量は、プラークのサイズと正の相関傾向を認め、症例数を増やして検討中である。アディポネクチン- Mac2 Binding Protein (M2BP)複合体を認識するモノクローナル抗体の作製に関しては、作製した抗体を検出抗体として構築したELISA系では免疫沈降とウエスタンブロットで半定量したアディポネクチン-M2BP複合体を検出できず、引き続き作製中である。
2: おおむね順調に進展している
複数のケモカインを新規アディポカイン制御因子(AKRF)として同定し、冠動脈疾患において動脈硬化との関連を検討し、新たな知見を得ている(未発表)。また、新規AKRFの同定や、複合体測定系の開発が進んでいる。
今年度も引き続き、ヒト血清や培養細胞から免疫沈降と質量分析を用いたアディポカイン制御因子(AKRF)の同定を行う。並行してヒトゲノムデータベースを用いて同定したAKRFに共通するアミノ酸配列を含むcDNAの検索も行う。動脈硬化との関連が推定される分泌蛋白や受容体や機能が未知の分子を候補とし、候補分子のcDNAを用いて蛋白を発現させ、in vitroの系でアディポネクチンやオメンチンとの特異的な結合が確認されたものをAKRFとし、複合体測定系の開発と臨床意義の解明、動脈硬化モデルにおける機能解析を行う。昨年度にAKRFとして同定した複数のケモカインに関しては、血管内皮細胞傷害、マクロファージや血管平滑筋細胞の遊走といった動脈硬化促進作用に対するアディポカインとの相互作用を培養細胞系で検討する。また症例数を増やして、AKRFであるケモカイン血中濃度や、血清アディポカイン- ケモカイン複合体量と冠動脈プラークとの関連を検討する。冠動脈疾患で血中濃度が増加することを見出したアディポネクチン- M2BP複合体や、冠動脈プラーク性状と関連することを明らかにしたアディポネクチン- シスタチンC複合体を定量的に測定するELISA系の構築を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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