本研究は、新規アディポカイン制御因子(AKRF)を同定し、アディポネクチンやオメンチンとAKRFとの複合体による動脈硬化発症機序を明らかにすると共に、複合体測定による動脈硬化の診断法と、AKRFをターゲットとした治療法の開発につなげることを目的とした。
2021年度は、AKRFとして同定したFrizzled-2 (FZD2)に関して、ファミリーを形成するFZD1‐10全てとアディポネクチンとの結合を検討した。アディポネクチンとFZDのそれぞれに別のタグをつけた融合蛋白を発現させ、一方のタグに対する抗体で免疫沈降し他方のタグに対する抗体で検出する系で結合を検討したところ、親和性の強弱はあるものの全てのFZDがアディポネクチンと結合することを見出した。アディポネクチンとの結合部位は、FZDファミリーの細胞外ドメインに共通して存在するシステインリッチドメインであると考えられた。FZDファミリーはWnt受容体として良く知られており、Wnt3aはβカテニン経路を介して単球接着に関与し、Wnt5aはJun amino terminal kinaseシグナルを介して炎症に関与することが知られている。培養細胞を用いてアディポネクチンのWntに対する作用を検討したところ、アディポネクチンはWnt受容体であるFZDファミリーと結合することでWntと競合して、これらの動脈硬化惹起性のシグナルを減弱させることが示唆され、新たなアディポネクチンの動脈硬化発症抑制機構であると考えられた(論文投稿中)。
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