研究課題/領域番号 |
18H02733
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
長谷川 寛雄 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (00398166)
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研究分担者 |
斎藤 益満 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 主任研究官 (20571045)
今泉 芳孝 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (40404305)
佐々木 大介 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (90624784)
柳原 克紀 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40315239)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HTLV-1 / 成人T細胞白血病 / 発症クローン / クロナリティ検査 |
研究実績の概要 |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染者の約5%が難治性の成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を発症するが、その原因・機序は不明である。本研究の目的のひとつはHTLV-1変異とヒトゲノムへの組込み部位を同時かつ簡便に検出可能な方法を樹立することである。その根幹となる方法を開発し、すでにATL約40症例の検討をおこなった。組込み部位解析をおこなったところ、組み込み部位には、がん遺伝子やがん抑制遺伝子内が含まれ、ホスト遺伝子発現に影響を及ぼしていた。 本研究はこの手法によりATL約300症例におけるHTLV-1 変異とHTLV-1組込み部位を同定し、ATL発症原因の完全解明を目指すものであるが、令和元年度は、本手法をさらに発展させながら、解析症例の蓄積をおこなうことができた。ATLの臨床診断におけるモノクロナリティの証明は、サザンブロット法に拠っているのが現状である。我々の方法はすでにサザンブロット法の欠点(大量のDNAを要すること、工程が複雑なこと、感度が不十分であること、結果報告まで時間を要することなど)を克服したものとなっている。これまでのところ、本手法をさらに発展させる試みは順調であり、本手法を骨格とした実用的な新規ATL個別化検査法の骨格を確立することができた。現在はその方法による解析・検査結果報告が臨床科のニーズに見合うものであるか検証をおこなっている。 HTLV-1変異解析の結果においては、いくつかのHTLV-1変異がATL細胞の免疫逃避を誘導するのみならずATL発症に関与するHBZ遺伝子の発現を亢進させていることを発見し、論文報告の準備中である。 一方、クローンの同定に関しては本手法によりメインクローンが捉えられているか評価する裏づけ作業のため次世代シーケンサーによる確認を行っており、この工程も順調に進展しており、症例の追跡・蓄積が進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規ATL個別化検査法の確立にむけて、すでに開発していた検査法によって、組み込み部位解析がおこなえた。さらに改善した方法も開発でき、その方法によっても同様の結果が得られることを確認した。臨床の現場に新しい検査法として紹介する取り組みを開始している。また、組み込み部位解析により、いくつかの遺伝子にフォーカスしノックインマウスの実験の候補を選択することができた。 クローンの同定に関しては本手法によりメインクローンが捉えられているか評価するため、次世代シーケンサーによる確認を行う作業が必要であるが、この作業を順調に行えており、継続可能である。よって本研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
組み込み部位解析の今日的な解釈の直しが必要であると考えられたため、症例数を増やして解析をおこなっている。また、ノックインマウスの実験の候補を選択することができたため、マウス実験を開始する。さらに次世代シーケンサーによるクローン解析作業を継続する。これまでの成果を国内外の学会で発表し、新しい検査法の紹介を臨床の現場に発信していく。
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