研究課題/領域番号 |
18H02735
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
田村 功一 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40285143)
|
研究分担者 |
涌井 広道 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10587330)
山下 暁朗 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (20405020)
小林 竜 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (60805612)
畝田 一司 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (90780370)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 情報伝達系 / 受容体 / 腎臓病・高血圧 / 病態解明 / 治療標的 |
研究実績の概要 |
今年度は、独自に作製した動物モデルやヒト組織を利用した、食塩感受性高血圧および腎臓病進行の不可逆化・腎臓起点の老化促進の分子機序における腎尿細管区分特異的なATRAPの従来機能と新機能の意義の解明に関して、実験動物における実証的検討を行った。具体的にはATRAP高発現マウスを用いて、慢性腎臓病病態モデルとして腎毒性薬物Xによる腎障害における腎臓の線維化に対する改善効果についての検討を行なった。また、近位尿細管特異的ATRAPノックアウトマウス(ATRAPPT-KO)の作製と慢性Ang II刺激誘発性高血圧への影響について検討した。さらに、クローン化不死化ヒト近位尿細管細胞株(ciRPTEC)の樹立を行い,in vitroでATRAPによるSIRT1発現調節機構を解析し、近位尿細管におけるATRAPの腎性老化に関わる機序について検討した。これらの検討結果から、近位尿細管においてATRAPがAng II-AT1Rシグナル伝達経路と非依存的にSIRT 1タンパク質の発現を調節していることが示唆された。また、ciRPTECにおけるSIRT1タンパク質の存在量が、主にタンパク質新規合成または安定性のレベルで調節され、mRNA転写または安定性のレベルでは調節されないことを示すものであると考えられる。 SIRT1は、加齢に伴う慢性腎臓病の病因に関与する分子であり、様々な機序を介して腎臓をはじめ、臓器保護的に働くタンパクである。本研究での結果は、加齢に伴う腎臓の線維化にATRAPの関与を示した我々の以前の報告と合わせて、ATRAPがSIRT1タンパク質発現を調節し、加齢に伴う慢性腎臓病の発症機序にどのように関与しているかの病態解明に貢献すると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はDP号アウトブレイク時からの新型コロナ感染症患者対応、中でも生命予後の高リスクとされる慢性腎臓病-透析コロナ患者の安全安心の医療提供のための神奈川モデル透析コロナ患者入院調整システム(透析版Kintone)体制の構築と運営を自治体(神奈川県)と連携して鋭意推進していたために、研究進捗に遅れが生じていた。しかしながら、神奈川モデル透析コロナ患者入院調整システム(透析版Kintone)体制の構築と運営が安定し、本研究にかけるエフォート状況も改善したために本研究の円滑な進捗と研究成果発表が達成できた。
|
今後の研究の推進方策 |
重大な国家的課題の一つである健康長寿の延伸のために老化の分子機構の解明と抗加齢制御の開発は重要な研究課題である。研究代表者は、ATRAPについて、これまで第1の受容体結合性機能選択的制御機能の意義に関して独自性の高い研究成果を発信しており、”日本発”の研究成果として優位性を維持し世界をリードしている。本研究においても、これまでの研究上の優位性を維持しつつ、健康長寿の延伸という重要な研究課題において、独自性の高いATRAPについて検討を進めてきた第1の受容体機能選択的制御作用とは別個の第2の新機能による腎臓線維化抑制作用、抗加齢制御作用の可能性に焦点を当てて研究上の重要な知見を得つつあり、本研究を継続・発展させることにより、さらに該当領域の優位性を発揮できると考える。
|