多系統萎縮症の関連遺伝子として同定したCOQ2遺伝子について,変異の機能障害性を評価するための新たな解析系を構築した(Neurogenetics. 2019 Mar;20(1):51-52).本解析系は,従来の評価方法(N Engl J Med. 2013 Jul 18;369(3):233-44)では検出が困難であったV393A変異の機能障害性を示すことができ,かつ簡便な解析方法であった. COQ2遺伝子変異を持つ,並びに持たない多系統萎縮症患者の末梢単核球からiPS細胞を樹立し,ニューロンへ分化させて,様々な検討を行った(Sci Rep. 2018 Sep 21;8(1):14215).その結果,COQ2遺伝子変異を持つ多系統萎縮症患者由来のニューロンでは,ミトコンドリア呼吸鎖の障害,酸化的ストレスへの脆弱性を示唆する所見を得た. これまでに,血漿中のCoQ10量が患者群で低下していることを報告した.脳脊髄液のほうが,病態をより反映すると考えられるが,血漿と比べて濃度が低いこと(1/500以下),還元型と酸化型CoQ10の弁別が困難であることが課題であった.この課題を克服する鋭敏な測定系を開発した(J Clin Biochem Nutr. 2018 Nov;63(3):205-210).この測定系を用いて,検討を行っている. 多系統萎縮症に対する多施設共同の患者レジストリーは,2020年3月末時点で448例の累積登録数を達成した.登録時の生体試料(ゲノムDNA,血漿など)収集とと もに前向きに,6ヶ月に1回の電話インタビューによるADL評価(UMSARS part 1),12ヶ月に1回の運動機能評価(UMSARS part 2)の評価を継続している. 自然歴に関する論文を準備中である.
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