研究課題
今回、αSynの二つの異なるモノマー構造に着目した(Conformer A B)Conformer AおよびBに対する、Fibril AおよびBのシーディング効果の特異性、を用いることで、髄液中に含まれるシヌクレイン凝集物がFibril AかBかを判別することができ、ひいてはPD(Fibril A)かMSA(Fibril B)かを判別できる可能性を見出した。シーディング効果の特異性とあるが、シーディング効果というのは、あるタンパク質の単量体溶液に、微量の凝集物(シード)を添加した場合、その添加した凝集物により凝集反応が促進される現象、およびそれによりできる凝集産物が、もとのシードと同様の立体構造をもつ現象をさす。その原則通り、Conformer AにFibril Aを添加すると、すみやかにFibril Aが増幅し、Conformer AにFibril Bを添加すると速やかにFibril Bが増幅された。一方で、シーディング効果の特異性は、時に特定のシードが特定の単量体にシード効果を示さないことがあることをいう。Conformer BにFibril Aを添加してもFibril Aのシード効果はなく、凝集は通常通りの速さで最終産物はFibril Bができた。Conformer BにFibril Bを添加する場合は、凝集は促進されFibril Bができた。この特異性を利用することで、もし髄液中にFibril Aが含まれていると仮定すると(PD患者髄液であるとすると)、Conformer A溶液に髄液を入れると非常に早く凝集反応が起こるが、Conformer B溶液に髄液をいれても凝集反応は促進しないことになる。またもし髄液中にFibril Bが含まれていると仮定すると(MSA患者と仮定すると)、Conformer A溶液にもConformer B溶液にも反応することになる。今後はこの特異性について検証を重ねる。
2: おおむね順調に進展している
PDとMSAにみられるような構造多型を検証する目的であるが、その傾向を確かにとらえているとともに、その違いが生まれる原理に迫りつつある。その点で非常に順調である。
実際の患者の検体から、増幅を行い、NMRやCryoEMといった高解像度解析にすすむ。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Scientific Reports
巻: Apr 12;9(1) ページ: 6001
10.1038/s41598-019-42399-0