研究実績の概要 |
アミロイド原生蛋白質の凝集過程において、様々な構造多型が生まれ(Ronald Melky, Nature Commun 2013)、構造の違いが病態の違いを生むことが示され(Ronald Melky, Nature, 2015、望月らMD journal 2019)、真に疾患を規定するものはアミロイド高次構造であるというStructuropathyの概念が芽生えた(図1)。事実、近年、患者脳内のアミロイド線維の構造解析により、同一蛋白質による異なる構造多型が神経変性疾患の病態と関連することや、患者脳内には疾患に特異的な高次構造を有したアミロイド線維が蓄積していることが報告された(Tycko, Nature 2017, Soto, Nature 2020)。今回の研究において、われわれはパーキンソン病(PD)にはロッド型の線維が、多系統萎縮症(MSA)にはツイスト型線維が蓄積している事を見出した。実際に、患者脳の解析では、パーキンソン病患者の神経細胞に蓄積する凝集体が、アミロイド線維であることを世界で初めて証明し(Araki 2019 PNAS)、またPDとMSAではその凝集体の二次構造が異なることを示した(Araki 2020 Sci Rep) また、そのロッド型を生み出す環境要因として、グルコシルセラミド、PIP3といった脂質が重要であることを示し、特定の脂質の結合がPD患者にみられるような特徴的な構造のシヌクレインを生み出すことを示した。 さらに、αシヌクレインの凝集阻害薬のスクリーニングを行い、1263種類の薬剤から、蛋白質凝集、細胞系、線虫系で効果のある薬剤を見出した。
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