研究実績の概要 |
Charcot-Marie-Tooth 病(CMT)は,遺伝性ニューロパチーの中で最も代表的な頻度が高い疾患であり,正中神経の運動神経伝導速度によって脱髄型と軸索型に分類されている.これまで約100の原因遺伝子が報告されており,その臨床的複雑性および遺伝的多様性のために臨床診断による原因遺伝子の推測は困難である.そこで今回、本邦のCMT疑いの1005症例を対象に次世代シークエンサーを用いてCMTの包括的遺伝子解析を実施し,これら症例の遺伝学的特徴について検討し、その結果を報告した.その結果1005例中,301例(30.0%)に病的変異を同定した.同定例における頻度はGJB1 (66例, 21.9%)とMFN2 (66例, 21.9%)が最も多く,次いでMPZ (51例, 16.9%) であった.脱髄型では45.7%の変異が同定され,同定例における頻度はGJB1(40.3%)が最も多くMPZ (27.1%), PMP22 (6.2%), NEFL(4.7%)と続いた.軸索型CMTでは同定率が22.9%と脱髄型と比較して低く、同定例における頻度はMFN2 (37.2%), MPZ (9.0%), HSPB1 (8.3%), GJB1 (7.7%), GDAP1 (5.1%), MME (5.1%)の上位6遺伝子で72.9%を占めた.発症年齢においては10歳が最も頻度が高く、さらに早期発症のCMTの診断率が高かった.北海道と四国を除く地域で,GJB1, MFN2, MPZの3遺伝子が上位を占めた.発症年齢分布については0~10歳発症が最も頻度が高く,さらに軸索(30.5%)および脱髄(54.8%)どちらも共に高い診断率を示した.本研究により,本邦における大規模な包括的遺伝子解析によりCMTの遺伝子頻度を示し,国際誌に報告した.
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