統合失調症の神経基盤は脳領域間の結合性の病態であるとの知見が集積しつつある。脳領域間の結合性の病理は、その形態学的側面を捉える拡散MRIと、その機能的側面を捉える安静時fMRIによってそれぞれ視覚化が可能である。しかし従来のMRI撮像技術には、複数の線維束の交差部位において白質走行の推定が困難となるなど、技術的限界が残されてきた。そこで本研究では、従来型のMRIの問題点を克服した次世代拡散MRI技術などを導入し、統合失調症の結合性病理を明らかにすることを目指した。上述の目標を達成するために、高傾斜磁場強度MRI(3テスラ)および超高磁場MRI(7テスラ)を用いて、健康被験者、統合失調症被験者の撮像を実施した。 研究期間全体を通じて、3テスラMRIに関しては統合失調症群、健康対照群、合わせて100例の撮像を達成した。7テスラMRIに関しては健康被験者93名を撮像した。3テスラMRIから得られた拡散画像については、マルチコンパートメントモデル解析(neurite orientation dispersion and density imaging:NODDI)およびfixel-based analysisの2種類の方法で解析を行った。加えて大脳白質解析として、freewater imaging、myelin mappingの二つの解析法を実施した。これらの結果の一部は学術論文として投稿準備中である。一方、7テスラMRIに関しては、安静時fMRIにおいて3TMRIに比べ空間解像度の高い画像が得られ、従来の研究ではその解析が困難であった微小構造を含む機能的結合性解析が実施できることを確認した。
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