研究課題
うつ病の発症には遺伝的要因のみならず環境的要因(ストレス)が大きく作用することが推測されている。しかし、大部分の人はストレスに適応することで精神的な健康を維持することができる。すなわち、うつ病予備群はストレスに対して脆弱な生物学的素因を有し、環境ストレスに対して適応することができずにうつ状態に陥るといった“ストレス脆弱性仮説”が支持されている。このようなストレス感受性の個人差はどのようなメカニズムで構築されているのだろうか? 1つの仮説として、後生的な遺伝子発現制御(エピジェネティクス要因)がストレス感受性に影響を与えている可能性が指摘されている。しかし、うつ病発症の個人差構築の分子神経基盤の解明には至っていない。ストレスによる脳機能低下の個体差構築のメカニズム解明は、うつ病などのストレス性精神疾患の予防・治療法の確立につながることが期待される。本研究は、うつ病発症に関わるとされるストレス脆弱性の個体差構築にはエピジェネティックな遺伝子発現制御異常に起因する神経ネットワーク変容が関わるとの仮説を検証することを目的としている。前年度に同定したKDM5Cの候補標的遺伝子について、そのバリデーションをリアルタイムPCR法により確認した。候補遺伝子2つについて、過剰発現マウスを作製し、ストレス対処行動の変容を確認した。また、ストレス負荷マウスに認められる特定の症状(行動変容)発現に関わる神経回路の同定を試みた。その結果、内側前頭前野を起点とした神経回路がアンヘドニアや社交性を制御していることを示唆する結果を得た。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Sci Rep
巻: 27 ページ: -
10.1038/s41598-021-81758-8
Brain Behav Immun
巻: 87 ページ: 831-839
10.1016/j.bbi.2020.03.018