研究課題/領域番号 |
18H02751
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大森 哲郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (00221135)
|
研究分担者 |
沼田 周助 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (10403726)
渡部 真也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (90563825)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 臨床精神分子遺伝学 / うつ病 / 診断マーカー / オミックス解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はうつ病の末梢血診断補助マーカーを作成することであるが、うつ病のように複雑で異種性が想定され、しかも末梢にその本質を顕現しているとはいえない疾患では、単一因子の測定値を診断指標とするのは原理的に困難を伴うことが予想される。この困難の打開策として、オミックス解析技術を導入して少量のサンプルから多数の因子を測定し、複数の測定値を組み合わせることによって診断マーカーを作成するという方策を我々は考えている。この観点から、遺伝子発現解析、遺伝子メチル化修飾変化解析、メタボローム解析などの網羅的測定を用いて研究を進め、いくつかの指標を見出し、国際誌に発表してきた。しかし、実用化のためには、疾患特異性をさらに確認し、測定法を実際的方法へと変更し、病態との関連についても検討しなければならない。本研究では、サンプル収集を継続しながら、解析数を増やして疾患特異性の検討を進め、網羅的測定から実用的測定方法への切替を準備し、マーカー所見の病態的意義の解明を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には、これまでに引き続き、サンプル収集を継続し、うつ病、双極性障害、統合失調症および健常対照からインフォームドコンセントを得て、評価尺度を用いて症状を評価し、治療前後に血漿、白血球mRNAおよびDNAを採取した。一部のサンプルについては近隣のクリニックの協力を得た。 メタボローム解析研究によって、末梢血におけるグルタミン/グルタミン酸はうつ病未治療期には低下しているが、症状改善に伴って増加することを明らかにしたが、グルタミン酸濃度に関しては、既報文献データをメタ解析し、その増加が報告を通して有意に認められることを確認した。所見の疾患特異性に関しては、双極性障害、統合失調症についてメタボローム測定を行い、解析中である。 メチル化修飾測定に関しては、実用的測定方法について検討した。栄研化学株式会社と共同研究を行い、同社のLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP)法を駆使することによって、網羅的方法によって同定したいくつかのマーカー候補メチル化サイトの測定は可能であることが判明した。しかし検討したサイトのメチル化修飾変化では、うつ病と健常者の差異を安定して検出するのは難しいことも判明した。グルタミン酸の測定法に関しても実用的測定法について検討を始めた。 病態との関連に関しては、薬物応答性に注目した解析を行い、薬物応答性を予測する変化について予備的なデータを得た。
|
今後の研究の推進方策 |
うつ病、双極性障害、統合失調症および健常対照者を対象に、既定のプロトコールに基づき文書によるインフォームドコンセントを得る。評価尺度を用いて症状を評価し、治療前後に血漿、白血球mRNAおよびDNAを採取する。すでに採取しているサンプルを合わせて用いる。 1)疾患特異性および治療経過との関連 うつ病に見られた所見の疾患特異性の検討や、所見が状態依存性か素因依存性かの検討を行うとともに、抗うつ薬治療反応性との関連の検討も行う。 2)実用的測定方法の確立と検証 診断マーカーとして実用化するためには、網羅的測定方法のままでは効率が悪く、コスト・パーフォーマンス的にも不適切である。メチル化マーカーに関し測定法に関する基礎的な検討を我々自身で行い、メタボローム解析によってうつ病で差異を認めた代謝産物のうちいくつかの物質の簡便な測定法の検討を企業研究者と連携して行う。 3)病態学的検討 セロトニントランスポーター遺伝子やドパミンD2受容体遺伝子のmRNA発現やメチル化変化に着目した検討ならびにメタボローム解析データに着目した検討を行う。 以上の研究において、研究代表者は全体を総括するとともにメタボローム解析を担当し、研究分担者の沼田周助はメチル化解析を、渡部真也はmRNA解析を担当する。研究代表者と分担者は同一分野の同僚であり、密接に打ち合わせを重ねながら研究を遂行する。なお、血液サンプル調整、遺伝子mRNA発現測定および遺伝子メチル化修飾測定のために技術補佐員を雇用する。
|