本計画では、脳ゲノムDNAの高深度ゲノム配列解析データからの体細胞変異同定技術の確立を主眼としている。本年度は、昨年度取得を行い、QC、フィルタリング操作を行った死後脳高深度エクソームデータ(統合失調症患者前頭葉について、神経細胞・非神経細胞各N=5、合計10検体)を用い、1)トランスポゾンLINE-1の新規挿入箇所の確立、および2)体細胞変異(SNV)の検出パイプラインの確立を行った。また、3)高深度エクソーム解析の追加解析を行った。 1)については、申請者らが新たに確立したパイプラインであり、1高深度エクソームデータあたり、非神経細胞エクソームで平均6ヶ所、神経細胞エクソームで平均3カ所の新規転移候補の検出に成功した。本技術の応用としてマウスモデルやマカクモデルでも同様の検出が可能であると期待され、次年度以降で応用可能性の検証を行う。2)については、既存の変異コールソフトの設定を変更することで、体細胞SNVの候補を抽出した。1高深度エクソームあたり、約5カ所の候補を同定し、頻度について神経細胞・非神経細胞での差異は認めなかった。3)高深度エクソーム解析の追加は、健常者、統合失調症患者それぞれN=10、N=5を追加し、おのおの神経細胞・非神経細胞でのライブラリー調整を行った(合計30検体)。エクソームデータについては現在取得中である。 本研究計画は、熊本大学における必要なヒトゲノム解析をよび倫理承認を受けて遂行した。
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