研究課題/領域番号 |
18H02754
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岸本 年史 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60201456)
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研究分担者 |
紀本 創兵 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00405391)
牧之段 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00510182)
井川 大輔 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00526717)
宮坂 俊輝 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00771023)
太田 豊作 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (10553646)
北村 聡一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10714389)
矢野 寿一 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20374944)
鳥塚 通弘 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (20588529)
松岡 究 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員(任非) (80613794)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 摂食障害 / 脳腸相関 / 事象関連電位 / 近赤外線スペクトロスコピィ / 思春期やせ症 |
研究実績の概要 |
・思春期神経性やせ症(Anorexia nervosa:思春期AN)患者の腸内フローラの変化の検証と脳生理機能の変化との連関解析 思春期AN患者(13歳から18歳)、および年齢・性をマッチさせた健常対照群から糞便を採取し、前年度に引き続き腸内フローラ解析を多面的に進めている。また、同患者群における脳機能の変化と連関しているかを事象関連電位を測定し、前年度の報告と同様にP300の潜時および振幅の異常を確認した。本年度はさらにサンプル数が拡大できたことから、サブ解析として思春期AN群において、Eating Attitudes Testを用いたANの症状の重症度及びBody Mass IndexとP300の成分との間の相関分析を行なったが、有意な相関を認めなかった。このことから、P300の示す認知機能障害は症状の重症度や体重に相関しないことが示唆された。また、近赤外線スペクトロスコピィを用いて、Stroop color-word課題遂行時の前頭領域の血液動態反応について、思春期AN群と健常対照群で比較検討を行った。結果、両群間においてStroop color-word課題遂行時の前頭領域の血液動態反応に有意差はみられなかった。さらに、眼球運動検査を用いた思春期AN群の視線活動について予備的な検討を行った。AN群における35の眼球運動の特徴量を入院前後で比較検討をしたが、入院前後で明らかな有意差のみられる特徴量を検出することはできなかった。 ・思春期ANマウスモデルの妥当性の検証 これまでに神経性やせ症のモデルマウスとして、その有用性が報告されているactivity‐based anorexia (ABA) を用いた。生後28日からマウス用ワイヤレスホイール(Neuroscience, Inc.)をケージに入れて行動量および食事量、体重を測定した。食事制限を与えることで、対照群と比較することで、体重は顕著に減少する一方で、夜間の行動量が顕著に増加することを再現することができた。これらについて、脳組織を回収し遺伝子の発現解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腸内フローラ解析、および脳機能・脳構造解析、神経心理学的検査に関する臨床研究においては、COVID19感染拡大により、検査および解析に遅れが生じた。一方で、神経生理学的な指標においては、事象関連電位が思春期やせ症の病態を理解するのに有用な可能性を明らかにすることができた。動物研究に関しては、activity‐based anorexia (ABA) マウスおよび、自閉スペクトラム症のモデルマウスとして汎用されるBTBRマウスを用いて、概念実証を行なうことを決定した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、AN患者と健常対照者の腸内フローラ解析、および神経心理、脳機能構造解析、および末梢血単球中の遺伝子発現解析のためのデータを蓄積し解析していく。総じて、回帰分析あるいはパス解析などの統計学的手法を用いて、臨床症状あるいは病態に関わる筋腫の同定、および脳腸相関の因果関係の同定を行なう。 マウス研究に関して、有効菌種あるいは糞便移植などを行ない、脳内環境が生化学的あるいは生物学的にどのように変化を受けるかを検討していく。
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