研究課題/領域番号 |
18H02756
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
竹林 実 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (60304440)
|
研究分担者 |
功刀 浩 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 部長 (40234471)
井上 飛鳥 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (50525813)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | うつ病 / リゾフォスファチジン酸受容体1 / オートタキシン / グリア |
研究実績の概要 |
うつ病は生涯有病率が約10%と有病率が高く、再発や難治例も多い。さらには不登校、離職、自殺として問題化して、経済的損失が多く、大きな社会問題になっている。従来のモノアミン神経を標的とした病態理解や創薬は限界にきている。本研究では、モノアミン神経ではなく、新たにグリアやリゾリン脂質といった新しい細胞種や分子に着目した視点での病態理解や創薬をすすめることを目的とする。申請者が、以前抗うつ薬の新規ターゲットとして発見したグリアにおける抗うつ薬受容体に着目して、うつ病においてリゾフォスファチジン酸(LPA)-LPA受容体1(LPAR1)系の機能低下があることを仮説としてたてて検証を行っている、本年度に明らかにした内容としては、うつ病患者における血中及び髄液中のリゾフォスファチジン酸(LPA)の合成酵素であるオートタキシン(ATX)の濃度が低下していることを見出した。また、LPA受容体1(LPAR1)のマウス脳内の発現分布を検討し、脳内の情動に関与する部位に広範囲に発現すること及びアストロサイトとオリゴデンドロサイトのグリア細胞特異的に発現することを見出した。次年度の検討にむけた、うつ病患者の髄液中のLPAの質量分析法による測定の基礎的検討を開始した。また、うつ病のモデルマウスの作成及びうつ病様行動に対して、LPAR1がどのように関与するか検証するために行動薬理学的な検討を開始した。今後は、さらにうつ病におけるLPA-LPAR系の機能低下の仮説の実証、バイオマーカーの検討およびうつ病モデル動物を用いた創薬のシーズになる化合物の探索を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うつ病患者サンプルでのATXの低下を示し、マウス脳内におけるLPAR1の分布を明らかにした。以上より、うつ病におけるLPA-LPAR系の機能低下の仮説の実証や基礎検討が順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
うつ病患者髄液における各種LPA分子種の測定を行い、バイオンカーカーの候補を探索する。また、一方でうつ病モデルマウスにおけるLPAR1の役割やLPA1関連の化合物による創薬シーズ探索に向けた検討を行う。
|