研究課題
われわれは、抗うつ薬受容体がグリアのリゾフォスファチジン酸1受容体(LPA1)であることを見出した。そこで、LPA1がうつ病の治療および病態に関わっているという仮説を立て、検証した。創薬シーズ研究として、多種類のLPA1アッセイを用いて抗うつ薬のプロファイルを特定した。その結果、抗うつ薬の中でも抗うつ作用の強力な三環系抗うつ薬がバイアス型のLPA1アゴニスト作用を特異的に有することが判明した。次に、ドラッグリポジショニングの手法を用いて抗うつ薬候補化合物を見つけるために、約1600種類の既存の治療薬から抗うつ薬と類似性のあるLPA1リガンドをLPA1アッセイ系を用いて選定した。一次スクリーニングで約50の既存薬の選定を行うことができた。一方で、バイオマーカー研究として、うつ病患者の脳脊髄液中の内因性LPA1リガンドの測定を行ったところ、DHA-LPAという分子種のみがうつ病患者において低下し、その低下が一部の抑うつ症状スコアと有意に相関していることが明らかになった。次に、病態研究として、うつ病モデルマウスを用いて、脳サンプルを解析したところ、内因性LPA1リガンドの合成酵素であるオートタキシンの遺伝子発現が変化していることが判明した。以上から、うつ病の病態及び治療に脳内におけるLPA合成・産生及びLPA1の経路が関わっている可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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bioRxiv
巻: 1101 ページ: 514841
10.1101/2022.11.02.514841
Biochem Biophys Res Commun.
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