研究課題/領域番号 |
18H02763
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
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研究分担者 |
辻川 哲也 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 准教授 (30380033)
米田 誠 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (70270551)
井川 正道 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (60444212)
牧野 顕 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 准教授 (00566226)
森 哲也 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 助教 (40397287)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子イメージング / 認知症 / PET/MRI / 酸化ストレス / 変性タンパク |
研究実績の概要 |
高齢化社会において認知症診療は最重要課題の一つである。近年アミロイド、タウイメージングの普及により、早期認知症診断が高精度で可能となったが、脳の虚血性変化や酸化ストレスも認知症の発症と深く関わっている。本研究では、変性タンパクの凝集・蓄積や酸化ストレスなど脳内環境変化と、認知症に至る神経変性の発生機序との関わりを、PET分子イメージングで詳細に検討する。また、最新のPET/MRI技術で、各種MRIとPET画像を組み合わせ、汎用性の高い超早期診断法の開発を目指した。 ① 臨床研究:高齢健常者およびMCI~早期認知症患者を登録し、アミロイドイメージング([C-11]PiB-PET)に加え、酸化ストレスイメージング([Cu-64]ATSM)を行った。PET/MRI装置で同時に撮像した安静時fMRI画像(rs-fMRI) や拡散画像(DTI等) をPET画像と同様に解析し、脳機能や構造指標の変化を病理学・生理学的変化とともに評価した。これまでに早期アルツハイマー病20症例、その他の認知症30症例、正常被験者14症例程度のデータが登録され、臨床症状、認知機能等の臨床データとともに解析中である。さらに、[C-11]PK11195等の神経炎症イメージングや、カナダMcGill大学との共同研究予定の[F-18]MK6240を用いたタウイメージングについても準備を進めている。登録患者は定期的に経過観察し、認知機能、脳機能画像、およびその他の画像指標で異常が認められた場合は、再検査により経時的変化を評価し、原因の特定と疾患の鑑別を進める。 ② 基礎研究:病理学的な裏付けを本基礎研究で確認するため、新規プローブ開発およびモデル動物による基礎実験を進めた。詳細は割愛するが、酸化ストレス、炎症性変化等の各種プローブ集積を、病理学的手法による各指標と比較する予定で準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミロイドイメージング研究に早期アルツハイマー病20症例、その他の認知症30症例、正常被験者14症例程度のデータが登録されるなど、臨床研究は比較的順調に進められている。酸化ストレスイメージングへの登録も同様に進めており、これまでのところ10症例程度の登録ができた。アミロイドイメージングより登録数が少ない原因の一つは原材料が高価であるため、アミロイドイメージングの結果により対象被験者を選定しているためである。 神経変性疾患の病態解析を開始する前にPET/MRI画像の定量性に関する検討を行い、2編の英文論文として発表した。さらに脳機能イメージングに関するPET, MRIを用いた研究論文は他に7編(うち英文6編)であった。また、PET/MRIに関する学会発表も並行して行っており、2018年度の発表は国内外で13件、うち11件は招待講演であった。一体型PET/MRI装置導入施設は国内に11施設あるものの、臨床研究は大学等の限られた施設のみで行われている。2018年度には脳画像研究が可能な三大学(福井大学、福島県立医大、神戸大学)が神経変性疾患に関する多施設共同研究を開始し、本学が代表施設となった研究課題「画像による脳の老化と神経変性発症過程の解明」は、日本脳循環代謝学会エビデンス創出委員会認定研究に選定された。 基礎研究については、既に確立された酸化ストレスイメージング等の研究は進められているものの、新規変性タンパク描出用PET薬剤の開発がやや滞っている。現在疾患モデルラットによる[Cu-64]ATSM 脳オートラジオグラフィー研究の準備を進め、2019年の本格始動を予定しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に引き続き、今年度も臨床研究、基礎研究を並行して進める。 ① 臨床研究:[C-11]PiB (Pittsburgh compound-B) PETによるアミロイドイメージングのみでなく、[Cu-64]ATSMによる酸化ストレスイメージングPET/MRI検査への参加協力を要請し、できるだけ同程度の症例数が確保できるように努める。また、[F-18]THK-5351あるいは[F-18]MK-6240によるタウイメージングの臨床導入を図り、各種PET分子イメージング、機能的MRIのマルチモダリティーによる認知症性神経変性疾患の脳画像データベース構築を目指す。PET/MRI装置によりPETとMRIデータの同時収集が可能であるため、同数のMRIデータ確保は容易に可能であり、2018年度に行ったresting-state fMRI解析のみでなく、DTI(diffusion tensor imaging)データ等の解析を進める。また、各種機能的MRI, PET分子イメージング画像をデータベース化し、多面的に解析するマルチモダリティー解析を進める予定である。 ② 基礎研究:既に臨床研究導入済みのPETプローブをモデル動物に応用し、オートラジオグラフィ(ARG) による脳内集積の基礎検討を行う。認知症モデルマウス脳内の変性タンパクや、酸化ストレス、炎症性変化等の各種プローブ集積を、免疫染色等病理学的手法による各指標と比較する。また、α-Synイメージングを目指し、京都大学小野博士(連携研究者)との連携により、最適なプローブを開発して脳内移行性や体内動態を確認する。さらに、CEST画像(MRI)用ファントムの開発など、臨床研究で用いる機能的MRI画像の最適化および標準化等も検討する。
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