研究課題/領域番号 |
18H02768
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
福士 政広 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (70199199)
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研究分担者 |
井上 一雅 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (20508105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | α線 / スペクトルサーベイメータ / 塩化ラジウム / 医学物理学 |
研究実績の概要 |
ポータブルα線スペクトルサーベイメータの開発・改良を実施した。試作・開発中のポータブルα線スペ クトルサーベイメータは、検出器に2000mm^2面積イ オン注入型シリコン半導体検出を採用したものである。また、スミア法に対応した真空容器設置型を試作した。 当初予定のAm-241のα核種のエネルギースペクトルの測定を明瞭に確認できた。平成30年度は購入が間に合わず、研究協力関係にある放射線医学総合研究所所有のNp-237、Am-241、Cm-244の3核種混合電着線源では、それぞれの核種のエネルギースペクトルを確認できた。また、令和元年度に同様の線源が購入でき、性能評価を実施した結果、同様の分解能を得ることができた。241Am電着線源および3核種(237Np、241Amおよび244Cm)混合電着線源(以下、3核種混合電着線源)を用いた実測の結果、可搬型α線スペクトロメータは線源検出器間距離が3.8 mmの場合、約240 keVのFWHMを有しており、複数のピークを持つα線源を検出することが可能であることが明らかとなった。しかし、空気層によるα線の散乱および吸収の影響により、線源検出器間距離が大きくなるとエネルギー分解能が増大することが確認された。空気層によるα線の散乱および吸収の影響を低減することでエネルギー分解能の向上を図るために真空中で測定できるように改良が必要であることを明らかにし、改良した真空容器設置型α線スペクトルメータに対して同様の性能評価を行った結果、線源検出器間距離が4.3 mmの場合に約160 keV、24.3 mmの場合に約110 keVのFWHMを有しており、真空条件下の測定によってエネルギー分解能の向上を実現した。α種スペクトルサーベイメータの開発研究は大方順調に進捗している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、ポータブルα線スペクトルサーベイメータの開発・改良を実施した。試作・開発中のポータブルα線スペ クトルサーベイメータは、検出器に 2000mm^2面積イオン注入型シリコン半導体検出を採用したものである。 241Am電着線源および3核種(237Np、241Amおよび244Cm)混合電着線源(以下、3核種混合電着線源)を用いた実測の結果、可搬型α線スペクトロメータは線源検出器間距離が3.8 mmの場合、約240 keVのFWHMを有していた。そのことより、複数のピークを持つα線源を検出することが可能であることが明らかとなった。しかし、空気層によるα線の散乱および吸収の影響によりブロードなエネルギースペクトルとなり、また線源検出器間距離が大きくなるとエネルギー分解能が増大することが確認された。そこで、空気層によるα線の散乱および吸収の影響を低減することでエネルギー分解能の向上を図るために真空中で測定できるように真空容器設置型を試作した。試作した真空容器設置型α線スペクトルメータに対して同様の性能評価を行った結果、線源検出器間距離が4.3 mmの場合に約160 keV、24.3 mmの場合に約110 keVのFWHMを有しており、真空条件下の測定によってエネルギー分解能の向上を実現することができた。 以前より原子力規制庁に申請中であったRa-223の使用許可を得ることができ学内での実験環境が整った。しかし、Ra-223線源は高額であるため当該年度での購入はできなかった。そこで、そこで、協力関係にある癌研有明病院でのRa-223核種を用いた実験に向けて調整中である。α種スペクトルサーベイメータの開発研究は大方順調 に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
安価なポータブルα線スペクトルサーベイメータの開発・改良は2018-2019年度に実施できた。2018年度において大面積 イオン注入型シリコン半導体検出を採用 しAm-241のα核種での性能評価は大方実施したが1核種のみなので2019年度はα線エネルギーの異なる核種;Am-241,Gd-148,Cm-244の3核種セット(セット販売) を購入し正確なエネルギー校正を実施することができた。2020年度はAIを用いた自然α核種との弁別機能の開発に着手する。そんために、種々の幾何学的な条件に対応するエネルギースペクトルの収集に努める。実測が不可能なデータにおいてはモンテカルロシミュレーションを基にデータの保管を実施する。自然界には大地放射線源と呼ばれるトリウム系列核種、ウラン系列核種、アクチニ ウム系列核 種や系列を持たない単独で存在する長半減期核種が存在し、それらの核種からのα線がバックグ ラウンドとして存在する。α線の計測ではバックグ ラウンドの取扱が重要な項目であり無視できない。 今年度から最終年度に掛けて、シミュレーション体系および深層学習ニューラルネットワーク ( Deep Learning Neural Network: DLNN ) の 学 習 体 系 を 構 築 し て AI ( Artificial Intelligence:AI))機能を採用することにより、バックグランド等の影響を適切に排除し正確なα線計測の 実現を図る。さらに、α核種の合理的な放射線安全管理方法の提案を2021年度に進める。最終年度では塩化ラジウム内用療法に携わっている方やα核種の取り扱いに精通している方に使用していただき、改善点の洗い出しをし、最終調整を行い臨床現場に則した合理 的な放射線管理方法を提案し、作業従事者に必要な作業・管理マニュアルを 作成する。
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