ポータブルα線スペクトルサーベイメータの改良を実施した。試作・開発中のポータブルα線スペ クトルサーベイメータは、検出器に2000mm^2面積イ オン注入型シリコン半導体検出を採用した。本測定器に関して、放射線輸送計算コードPHITSを用いて最適化を図るとともにコリメータ付加の検討をし、α核種製造現場での使用に関する応用を検討した。 PHITSを用い用いた最適化では、Si半導体検出器の不感層の厚さとエネルギー分解能を600 nmおよび100 keVに最適化することにより、線源-検出器間距離(SSD)3.8 mmから23.8 mmの距離において241Am電着線源および3核種(237Np、241Amおよび244Cm)混合電着線源(以下、3核種混合電着線源)の実測のαスペクトルを再現できた。このことにより、実測によらない条件下の性能評価が可能となった。コリメータ付加に関しては、アルミ製ハニカム構造(箔厚25μm 厚さ5 mm)を付加した結果、SSDが8.8 mmのとき、241Am電着線源で半値幅(FWHM)と10分の1幅(TWHM)で123 keV、247keVとなり、225Ac(5.8 MeV)、226Ra(4.7 MeV)のα線エネルギー差800 keVを識別が可能であることが判明した。コリメータ付加により225Acおよびその子孫核種から放出されるα線のテーリングによる影響を抑えることができ、225Acに混入する226Raの検出が可能であることが示された。 本測定器は、225Ac製造現場での使用に際し有効性が高いことが示唆された。本来、α線は真空中で測定する必要のある従来のα線放出核種の同定法を大きく簡便化するものであり、実際に225Acなどα線製造現場での使用が期待される。
|