研究課題/領域番号 |
18H02769
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
玉木 長良 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (30171888)
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研究分担者 |
小川 美香子 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20344351)
酒井 晃二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20379027)
納谷 昌直 北海道大学, 大学病院, 講師 (20455637)
真鍋 治 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (40443957)
益田 淳朗 東北大学, 大学病院, 医員 (50769594)
久下 裕司 北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
板谷 慶一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70458777)
真鍋 徳子 北海道大学, 大学病院, 講師 (70463742)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | PET / 動脈硬化 / 治療戦略 / 画像診断 |
研究実績の概要 |
加齢に伴い動脈硬化(プラーク)の形成が進むが、プラークが破綻することで、心筋梗塞や脳梗塞が生じる。プラークの不安定化のメカニズムはまだ不明な点が多い。これまでの検討では、不安定プラークの描出にはマクロファージ活性を示す18FDGやカルシウム動員を示すNa18Fの集積が有効とされ、PETが利用され始めている。 そこで本研究では炎症細胞浸潤を反映するFDGと、Ca動員を反映するとNaFを用いた分子機能解析、石灰化やプラーク内出血などのCTによる微細な形態解析、さらには水拡散、脂質コア、シアストレスなどMRIを駆使した機能解析を統合的に行うことで、血管疾患の活動性や病変の進展を映像化し、治療戦略に繋げることを目指す。まず動脈硬化モデルマウスおよび家兎を用いて、免疫病理組織学的検討に加え、オートラジオグラフィや小動物用PETを用いてPETやCTでプラークの病態をどのように映像できるか検討する。他方臨床例では融合画像法を活用して頸動脈プラーク病変に応用し、一部病理組織所見と対比して検討を進める。後半には冠動脈プラークの評価を目指し、最適画像収集法や解析法を導入する。さらにはPET/MRI一体型装置を用いて、不安定プラークの病態をどの程度把握できるか、についても考察する。最終的には、最新の画像融合技術を利用し、頸動脈や冠動脈プラークにおける病態情報を統合的に解析する。 動物実験での検討結果を臨床例に活かし、経過観察,治療前後での評価に応用することで、プラークの不安定性評価や治療戦略のための最適な包括的映像法の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養骨芽細胞・破骨細胞を用いたNaFのとりこみに関する実験および FDGとの比較検討をおこなった。マウスから採取した骨芽細胞と破骨細胞へのNaF及びFDGの集積量を検討した。その結果、NaFは骨芽細胞に高い集積を示し、破骨細胞にはほとんど集積しなかった。また動脈硬化病変に存在する各細胞の分布を免疫染色で評価した結果、NaFがよく集積している部位ではRAM11染色では染まったが、SMA染色では染まらなかったこのことから、NaFの集積に関してマクロファージが寄与する可能性はあるが、平滑筋細胞の寄与は小さいと考えられる。 他方、臨床での検討では、PET/CTの画像と、別に撮影されたMRIの画像を、今回の研究費で購入した画像処理装置を用いて、画像融合する試みを進めている。最新のMRIでは冠動脈起始部の血流量を定量的に解析できるようになり、PETで測定された心筋血流量と高い相関が得られている。MRIを用いれば心血管の病態を三次元的にとらえやすく、かつ動きのない脳の画像の融合はソフト上、ある程度高精度に融合できることが確認できた。この経験に基づいて、全身画像でも別に撮像した多種類の画像を融合する検討を進めている。他方冠動脈プラークの描出を試みる際に問題となる心筋へのFDGの生理的集積を抑制する方法についても、詳細に検討を進めている。特に臨床例での検討では最終の食事の内容確認、および長時間絶食時間の必要性を確認できた。また血液中の血糖値やインスリン値を抑えるだけでなく、遊離脂肪酸値を十分高めることの必要性も確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
PETを用いた動脈活動性をみる薬剤として用いられるFDGとNaFの集積機序の関する基礎的検討をさらに進める予定である。また治療を介入した場合の薬剤集積の変化についても、インビトロ、および小動物での実験系で進める予定でいる。 他方、これら基礎的な検討に加えて、臨床例でもPET/CTおよびMRIを用いた種々の症例に動脈硬化病変に対して、どのような異常所見を呈するか、の検討を進めている。同時にPET/CTとMRIの画像融合も進め、動脈硬化病変の病態評価を多角的にとらえる検討を次年度以降本格的に進める予定でいる。特に基礎実験で進めているNaFを用いることで、FDGのような食事制限が不要なこと、また別の角度から動脈硬化の病態を映像化できることで、期待している。 最終的には、基礎実験および臨床検討を総合的に判断して、動脈硬化病変の不安定性を主体とする性状評価に優れた機能画像診断法、および治療介入した際の治療効果判定に優れた指標を模索する予定でいる。
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