研究課題
活性化グリア細胞の増生によって特徴づけられる神経炎症は、アルツハイマー病の発症や病態形成に深く関与する。我々は反応性アストロサイトを生体画像化する目的で、反応性アストロサイトに高発現しているモノアミン酸化酵素B(MAO-B)を検出するPETプローブ[18F]SMBT-1を開発した。これまでの前臨床研究の結果、[18F]SMBT-1の優れた結合特性、動態、安全性が確認されたことから、健常高齢者とアルツハイマー病患者を対象とした臨床研究を豪州メルボルン大学と東北大学で実施した。[18F]SMBT-1は投与後速やかに脳内へ移行し、健常人では生理的に存在するMAO-Bの脳内分布に一致した集積分布を示した。ブロッキング研究の結果、[18F]SMBT-1の結合はMAO-B阻害薬によって阻害されたことから、MAO-Bとの高い結合選択性が確認された。アルツハイマー病患者では、大脳皮質におけるSMBT-1の集積が健常高齢者に比べて有意に上昇していたことから、アルツハイマー病におけるアストログリオーシスの関与が示唆された。上記研究と並行して、オフターゲット結合が少ない新規タウPETプローブの開発を進め、新規プローブ候補化合物[18F]SNFT-1を開発した。[18F]SNFT-1はPHFタウへの高い結合親和性、結合選択性、優れた脳移行性を示したことから、有力なタウPETプローブの候補化合物と考えられた。臨床研究への準備を進めるため、東北大学に設置されている既存の多目的合成装置を用いて、[18F]SNFT-1の自動標識合成装置のセットアップを行った。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍の影響で臨床研究の被検者確保が難航したものの、反応性アストロサイトを画像化する新規プローブ[18F]SMBT-1の臨床研究を実施できている。次世代タウプローブの有力候補化合物の開発にも成功し、自動標識合成装置のセットアップを進めることができた。
[18F]SMBT-1の臨床研究を継続し、その臨床的有用性を評価する予定である。また新規タウPETプローブを用いた臨床研究への準備を進める計画である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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